≪前編より続く≫
そして迎えたインターネット時代に、登場したのが「杉沢村伝説」であった。
「陰惨な大量殺人により、地図からも消されてしまった村があった。その村の入り口には、髑髏に似た石がある。或いは古びた鳥居が目印である」
こんな内容の噂が駆けめぐり、日本中のマニア、マスコミを巻き込んで大騒ぎとなった。
「この場所こそが、本当の杉沢村だ!」
「ついに、杉沢村の入り口の謎を発見した!!」
と多くの情報がよせられた。
日本中が金田一耕助となり、杉沢村捜索に借り出されてしまったのだ。同時に類似の村が各地でささやかれた。
アメリカからやってきた殺人者がジェイソンのマスクを被り、村人を殺しまくる「ジェイソン村」なども噂された。ジェイソンのソンが「村(そん)」と重なるため、洒落が都市伝説を生んだのであろうか。
この「ジェイソン村」だが、茨城、神奈川、群馬、熊本、東北などでウワサされていて、第二の杉沢村に迫る勢いである。また、犬鳴峠の付近にある「犬鳴村」などは、近寄る若者に対して住民が鎌を持って追いかけてくるとも言われたが、実はそんな村は存在しないという事になっている。
神への生け贄のために、戸籍のない子供を育てる「生け贄の村(或いは島とも言われる)」、村人が夜になると蘇る「死人村」という噂も筆者は聞いたが、実際には中国にある村で中国国内でも怪しい地名だと言われているようだ。他にも奇病に感染した住民ばかりが住む山村の噂も聞いた。
一躍○○村は、都市伝説の人気分野となってしまった。それもこれも「杉沢村効果」である。
最後に、私の知りうる”杉沢村の真相”をここに記しておく。
まず杉沢村は、今も昔も存在しない。というか、存在するはずがない。何故なら、”杉沢村はメデイアによって作られた村”なのだ。一部青森県にあった”小杉”という地域が杉沢村のモデルとなったという解釈もあるが、本当は情報操作に踊らされた結果、偶然似た廃墟エリアがあっただけの後付結論なのだ。
つまり、政治的に地図から消されたというわけではなく、また小杉が杉沢村という呼称に変じたわけでもない。実は青森で発生した某大量殺人をもとに創られた、架空の村であるという事である。
この殺人事件の関係者は存命なので、具体的な事件名は伏せるが、数人レベルの殺人事件であり、大量殺人というには憚られる。つまり、そのような小規模?な大量殺人に、津山事件、横溝正史のエッセンスを加味し、意図的に操作された情報であるのだ。
元々、杉沢村伝説は、心霊作家・山岸和彦氏(中岡俊哉氏と仕事を共にした自他共に認める後継者、毎年二見文庫から心霊本を発売している)の「日本の七不思議」の投稿から、マスコミを通じ都市伝説となったのだ。彼はフジテレビのアンビリバボーの企画・情報収集ブレーンも一時期努めており、番組内での「杉沢村伝説」をブラウン管で全国に広げた一人でもあるのだ。
整理すると、青森の大量殺人(といっても数人程度)をもとに投稿・webサイト・テレビと経過する度に肥大化していった都市伝説であるのだ。ひょっとすると我々現在人は、村(=生まれ故郷)を捨てた自分の後ろめたさを、杉沢村の殺人犯に重ねていたのかもしれない。
故郷や自然を破壊し、忘却しながら生きていく文明と現代人。だからこそ「杉沢村」は、人々の心に架空の村として存在し続けたのであろう。
つまり、「杉沢村」を探し廻った我々は、失った自分の故郷を探し続けていたのかもしれない。
なお、ATLASでは村に関する都市伝説として、「黒い雪に覆われるシベリアの村」「いけるはずのない村・八ヶ岳村」「零戦がそのまま残る・大日本帝国村」「男児がいない村、男児が生まれたら奇形児である確率大の村」「自らの体を切り刻む村・指切り村」「動物の霊をおろす村・岐阜県に存在するカワサキ村」「130歳を超えるスーパー長寿が続々、長寿村」「新潟に存在した!?男を返してくれない女人村」「弓矢を呪う村 」「世界で1番寒い村・ロシアサハ共和国」「1000人を庇い処刑された「おろくにん様」の伝説のある村」「獣少女がいるタワクーン村 」「入ったら出ることができないラビリンズ村」「足を踏み入れてはならない呪いの村」「死人が徘徊する死人村」「アフリカ都市伝説、いかりや長介村がある 」などのアーカイブが人気である。
(山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)