事件

16人の人格を持ったといわれた、女性「シビル」の顛末

一人の人物の中に、多くの人格が存在している・・・いわゆる多重人格障害(MPD)、または解離性同一性障害と呼ばれる症例は現在でもよく知られた精神障害の一つである。

「24人のビリー・ミリガン」をはじめ、様々な症例が今まで報告されているが、アメリカにて多重人格の先例となったのが「失われた私 多重人格・シビルの記録(原題 Sybil Exposed: The Extraordinary Story Behind the Famous Multiple Personality Case)」。

シビルことシャーリー・メイソンという女性はミネソタ州の農場で両親と暮らしていたが、ある時から「自分が移動した覚えが無い場所にいる」事を繰り返すようになる。

精神分析医のコーネリア・ウィルバー博士はシャーリーが幾度も「解離性遁走」を繰り返している事に気づき、投薬と催眠治療の結果シャーリーの中に16人もの別人格が存在していることを突き止めた。

シャーリーの中には妙齢の女性から大工の男性、赤ちゃんまで様々な人格があり、一人一人に名前がついていた。彼女の人格が分裂したのは、彼女の家庭がキリスト教の中でもマイナーな宗派に属しており、神経質な母親に幼い頃から虐待を受けていたためだった。

ウィルバー博士は彼女について書籍に著す事を決め、彼女を説得してフルタイムで治療を敢行。ジャーナリストのフローラ・レタ・シュライバーが治療の様子を記録して前述の本が出版された。この本は全米でベストセラーとなり、1976年には彼女をモデルとしたドラマが放映され、多重人格症を患う人たちが一気に増えたという。

だが、この本の内容は全くの嘘だった。

シャーリーが厳格な家で育ったのは事実だったが、虐待は行われておらず、父親や住み込みの家政婦も虐待を目撃していなかった。シャーリーには空想癖があったものの、厳格な家ではあまり口に出す事が出来ず、また関心をひくために記憶障害を装うようになったという。

その後、自身が掛かっていたウィルバー博士が転勤することが決まり、焦ったシャーリーは昔からやっていた記憶障害を装ったという。彼女の症状を見たウィルバー博士は様々な治療行為を行い、多重人格症患者の例として論文に著し、協力者を得て本にもなった。

一方、シャーリーは自身の症状が詐病である事を知られる事を極端に恐れ、ついには自分からすべてを暴露しようと告白する手紙を書く事にした。

ところが、この内容はウィルバー博士が「患者が自己防衛のためにやったこと」として否定。更にシュライバーも出版社と本の出版を契約した後だったため、内容を取り消す事もできず、刊行に至ってしまった。

結果、彼女等の本はベストセラーになって3人の元には多額の金が舞い込んだものの、互いが互いを牽制し、抑え合うような関係になってしまった。

シャーリーの状況は改善せず、ウィルバー博士は彼女が全てを告白してしまうのではないかと疑い、二人は長い間同居するまでの状態になった。シュライバーもその後の著作は鳴かず飛ばずで、三人の晩年は貧困に苦しみ孤独だったという。

多重人格症は、その人の精神が苦痛や不快な経験から自分自身を切り離すために生まれた希有な症例であることは間違いない。しかし、だからといって実態を隠した記録や、適切な診断結果に基づかない症例までひっくるめて同一視されるべきではないのもまた事実ではないだろうか・・・

(山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像 ウィキペディアより引用

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