栃木の那須塩原温泉と言えば、昔から名湯で有名である。
そんな塩原温泉に店を構える老舗の旅館「ホテル日本閣」にて、1960年に旅館主の妻が失踪した。旅館主は周囲に「妻が外に男を作って出ていった」と触れ回っていた。
だがその後、10ヵ月後に旅館主本人も行方をくらましてしまった。妻に続く夫の失踪・・・だが、日本閣の共同経営者である女性小林カウは、旅館主は金策に走り回っているだけと答えていた。
しかし あまりにもタイミングが良かったので不審に思った警察はこの夫婦失踪事件を捜査しはじめた。
警察がまず事情を聞いたのは、この温泉地の各所で仕事を手伝い、日本閣でも下男になっていた男性だった。下男はすぐに小林カウに頼まれて2人の殺害を手伝ったと自供。彼の証言通り、日本閣の床下から旅館主の、裏山から旅館主の妻の白骨死体が発見されたのである。
小林カウは温泉街で土産物屋を営んでいたが、男好きでも有名であり、店でもワイセツ画を売るなどしていたため摘発されて罰金刑となり 悪評を呼んで営業が苦しくなった。
そんな折り、日本閣の旅館主と意気投合した小林カウは旅館主に高額の出資をした。だがその後、彼女は下男と共に旅館主らを殺害。旅館の乗っ取りを試みたのである。
なお、小林カウは下男と共に死刑判決が1965年に最高裁で下り、1970年に執行された。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
※画像©写真素材足成