『キングダム』は、漫画家・原泰久による日本の漫画作品である。2006年から「週刊ヤングジャンプ」で連載中の作品であり、始皇帝を支えた武将・李信をモデルとした信を主人公に、古代中国の戦国七雄の争乱を背景とした物語となっている。
『史記』に準拠しているものの、時代的に詳細な史料が乏しいという事情もあり、「書いていなければいい」を基本スタンスとして、オリジナルな設定が多く加えられている。
例えば、黄帝の討伐者であるキョウカイは、特に「男」との記述がないために作中では女性として登場しており、またセイキョウの乱での「壁死す」という描写から壁将軍の退場が予定されたが、ここでの壁を「城の中で」と解釈させたことで実は生き残っていたという展開もされた。
本作は、そうしたオリジナルや誇張設定を盛り込みながらも、青年誌でありながらその作風が少年漫画のような派手さ、そして合戦の緻密で迫力のある描写もあり、第17回手塚治虫文化賞漫画大賞受賞、2023年には70巻発売をもって集英社青年誌初の累計部数1億部を突破、さらにはテレビアニメ化や映画化なども数度なされている人気作品となっている。
しかし、そんな「キングダム」も初期の頃は人気が振るわず、打ち切りの危機に直面していた。そして、その打ち切りの危機から救ったのは、『スラムダンク』でお馴染みの漫画家・井上雄彦であったという。
原と井上の関係は、「キングダム」連載前に遡る。原は編集部から「武者修行」をするよう命じられ、当時『バガボンド』などが連載中であった井上のもとで4ヶ月ほどアシスタントをつとめた。アシスタントののち「キングダム」の連載が始まった原だったが、前述のように打ち切り候補作品の一つとなってしまい、とある打ち上げパーティで井上と対面した際にこのことを打ち明けることにした。
原は、不人気の原因はストーリーにあると思っていたため、どのようなストーリーに構成すればいいかを乞うつもりだった。ところが、井上の返答は思いもよらないものであった。「ストーリーは面白い」。続けて井上はこう続ける。「目だよ。信(主人公)の黒目が小さすぎるから大きくしたらいい」。
原は、「問題は目だけ」という井上の返答に驚きながら、はじめは理解が追い付かなかったという。しかし、いざその助言通りに黒目を大きく描くようになると、信じられないほどに人気の順位があがっていった。
「キングダム」は、プロのたった一声によって打ち切りの危機から救われることになったというわけだ。
【参考記事・文献】
・https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/13909.html
・https://10-11-23-24.sakura.ne.jp/manga%EF%BC%86lightnovel/hara-yasuhisa/
・https://x.gd/X3TjQ
・https://bibi-star.jp/posts/20930
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【文 ナオキ・コムロ】