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「クリスタルキング」伝説 アニメ『北斗の拳』主題歌を資料無しに作詞?!

クリスタルキング(略称クリキン)は、1971年にムッシュ吉﨑を中心に結成された日本のロックバンドである。田中昌之と共にツインボーカルで活躍していた印象が強いが、現在は吉﨑のソロプロジェクトとして残っている。

クリキンの代表曲といえば、1979年に発表された『大都会』だ。「あー果てしない」で始まるこの楽曲は、1980年の2~3月にかけて6週連続でヒットチャートの首位を独走し、150万枚を売り上げる大ヒット曲となった。

1978年、ヤマハポピュラーソングコンテスト(ポプコン)の第16回本選が10月1日に行なわれた。クリキンは『明日への旅立ち』という曲を歌唱したものの結果は入賞に留まり、グランプリを勝ち取って区切りをつけるはずだった彼らにとっては、肩を落とす結果となってしまった。

その時、「お前ら九州の男やったらもう一回勝負するよね?」とスタッフが声をかけ、この言葉で継ぎはグランプリを獲ると奮起することになった。

どのような曲で勝負するか、きっかけとなったのはその回のグランプリ曲だった。実は第16回のグランプリは円広志の『夢想花』。

「飛んで飛んで」という強烈なインパクトを与えるサビを振り返り、結果「とにかくサビのフレーズで審査員を驚かせよう」「田中の高音で始まれば審査員もビックリするはず」というアイデアが閃いた。こうして誕生したのが『大都会』だったという。

そしてこの読み通り、当時のディレクターであった萩原暁いわく「出だしの田中のハイトーン」が決め手となり、翌年第18回本選で彼らは見事グランプリを獲得した。

なお、これはよく知られていることだが、この曲で言う「大都会」とは博多のことであり、当時メンバーたちの出身であった佐世保から見て博多が憧れの大都会であったことに由来している。

だが、大ヒットを記録してからというもの次第に人気は低迷していき、クリキンは”一発屋”という烙印を押されることになってしまった。

しかし、これで終わらなかったのがクリキンであった。

1984年、テレビアニメ『北斗の拳』が放送開始された。そのOP主題歌『愛をとりもどせ!!』を歌唱したのがクリキンだ。

「You は shock」(You “are” shockではない)という力強い歌唱で現在もなお親しまれているこの曲は、放送当時はオリコン最高53位でありながら、総売上50万枚というロングセラーヒットとなった。これによってクリキンは、一発屋の汚名を返上することに成功したというわけだ。

しかし、これにも面白い逸話がある。作詞担当の一人であった田中は、そもそも漫画が好きではなかったということもあり、事前に資料として与えられた「北斗の拳」のコミックに全く手を付けずにいた。それどころか、アニメの曲を歌うことに対しては「ふざけるな!」という心持ちですらあったという。

結果的には、歌って良かったと後年に語っているようだが、資料(コミック)を見ずに歌詞制作に関わったというのも、非常に面白い話だ。

因みに、当時クリキンに所属していたメンバーに、のちの爆風スランプのドラム担当・ファンキー末吉がおり、この「愛をとりもどせ!!」のドラムを披露していたのは彼によるものである。

【参考記事・文献】
・https://utagoe-kamisama.com/kurisutarukingu-tanaka-sainou/
・https://dic.pixiv.net/a/%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0
・https://www.tapthepop.net/machinouta/58884

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【文 ナオキ・コムロ】

画像『愛をとりもどせ!!