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「コント55号」伝説の番組『裏番組をぶっとばせ!!』で野球拳をした本当の狙い

コント55号は、萩本欽一と坂上二郎の二人によるお笑いコンビ『コント55号の世界は笑う』をはじめとして、主に体を使った笑いを多く展開し、萩本の「なんでそうなるの!」と坂上の「飛びます飛びます」は当たりギャグとして有名になった。

1960~70年代にかけては、ザ・ドリフターズといわゆる土8戦争(土曜8時台の視聴率争い)を繰り広げ、お笑い人気を二分した存在としても知られる。

志村けんは、もともとテレビで見ていたコント55号に憧れていた身であったため、当初は弟子入りするのにコント55号かドリフかで迷っていた。結果としては、自身が音楽好きということもあり、コミックバンドとして活動していたドリフへの弟子入りを決めたという。

コンビでのコントの大筋は、常識人の坂上が常軌を逸した萩本の言動に振り回されるというスタイルとなっている。

これについて萩本は、「ボケとツッコミ」という語を使用せず「フリとコナシ」と称している。つまり、不条理なフリに対する坂上の全力のコナシが爆発的な人気を獲得する大きな要因だったということだろう。コントの終わりでの坂上は、下着を脱いでしまうほど毎回汗まみれだったという。

コント55号の代表的な番組の一つとして忘れてはならないのが、1969年4月から70年3月まで放送されていた『コント55号の裏番組をぶっとばせ!!』だ。この番組は、裏番組、すなわち大河ドラマ『天と地と』が高視聴率であったことを意識したタイトルとなっており、またこの番組名によって業界用語である「裏番組」という語が、世間一般でも用いられるようになったと言われている。

さて、この番組最大の売りは「野球拳」の存在である。

ご存じの通り、野球拳は互いに歌に合わせてじゃんけんをし、負けた方は着衣を一つずつ脱いでいくというお座敷遊びの一つ。「裏番組をぶっとばせ」は、そんなお座敷遊びを公開で行なったという点でも斬新であったが、何より本来のルールである脱衣をそのまま行なったということでも人気を獲得。

芸者の三味線ではなくバンド演奏のもと、女性タレントと坂上がじゃんけんをし、女性タレントがどんどんと脱いでいくという様子は、公開放送ということもあって会場は熱狂的な盛り上がりを見せた。

出演した女性タレントとしては、山本リンダやちあきなおみなどが知られている。しかし、さすがにこの時代とはいえどもPTAらのクレームが多々寄せられることとなり、「低俗番組」などと呼ばれ、結局野球拳のコーナーはすぐに廃止されることとなってしまった。

ところで、そもそもなぜこの野球拳がコーナーとして設けられることになったのだろうか。

当時のプロデューサーであった細野邦彦は、視聴者参加型の番組という形式を考慮する上で、「お客に得をさせる」ためには何をすればよいかと考えた末、タレントの衣服や持ち物をオークション形式で売ればよいのではないかと思い至った。

しかし、単にオークションを行なうのでは面白くない、そうしたオークションへの流れを作る何らかの盛り上がりが必要だ。「名優は子供に勝てない、子供は動物に勝てない、そして動物も裸には勝てない」。そのようなジンクスが芸能界にある中、脱いで裸になっていく野球拳という遊びは、まさしくうってつけだった。

こうして、野球拳でタレントが脱いだ衣装はその場でオークションにかけられ、その収益は交通遺児のための全額寄付に回されたのだという。のちに、萩本はチャリティー番組『24時間テレビ』の初代司会者を務めるが、「低俗番組」との非難はあったものの、そうしたチャリティー番組の先駆けといっても良い番組だったという見方もできるだろう。

なお、この野球拳に代表されるテレビのお色気路線は、その後「スーパーJOCKEY」の熱湯コマーシャルにも受け継がれていったと言われている。

【参考記事・文献】
https://x.gd/cxFUI
https://allabout.co.jp/gm/gc/377529/
https://owarai-lover.hatenablog.com/entry/2017/12/14/163803
https://www.news-postseven.com/archives/20200406_1554369.html?DETAIL
https://www.zakzak.co.jp/article/20240221-WWM4TXNQHJNXHMYPQDSUOQ454Q/

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【文 ナオキ・コムロ】

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