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日本の魔法少女ジャンル誕生のきっかけを創った、海外コメディ『奥さまは魔女』

『奥さまは魔女』は、1964年から1972年にアメリカで放送されたテレビドラマ。ごく平凡な新婚夫婦の”奥さま”である主人公のサマンサが、タイトルの通り実は魔女であり、夫のダーリンと「魔法を使わない」と約束をするものの状況に応じて魔法を使ってしまい、それによって様々な珍騒動を巻き起こすというコメディドラマとなっている。

現実世界に異世界の存在が紛れ込むことで奇妙な出来事に発展していく、いわゆる「エブリデイ・マジック」と呼ばれる物語形式の金字塔とも言われる作品であり、現在もなお高い人気を誇る作品となっている。

今現在まで、シチュエーションコメディ作品における「奥さまは~」というタイトルとなっている作品は、ほぼこの作品のオマージュといっても過言ではない。いわば、本作は一つの物語様式を創成した作品と言っても良いだろう。

本作は日本に多大な影響を与えた。たとえば、前述したようにサマンサの夫は「ダーリン」と呼ばれている。『うる星やつら』などで聞き馴染んだ人にとっては、男性の恋人に使用する語のイメージが強いだろう。だが、実は彼のこの名前は「Darrin」という実在する人名にすぎず、それどころか恋人に対して使用するダーリン「Darling」とは全く言葉が異なっている。

おそらくは、洒落として掛けていた意図はあったのかもしれない。そして、日本においてこの意味で「ダーリン」という言葉が広まるきっかけを作ったのは、結果として本作であるとも言われている。余談だが、ダーリン(Darling)は「最愛の人」を意味するため本来は男女の区別が無い。

なお、こぼれ話だが、本作では実はダーリン役が二人いる。正確に言えば、途中で交代しており、前期はディック・ヨークが演じていたものの映画撮影時に負傷し降板、そのため後期はディック・サージェントが演じることとなった。

この両者、芸名が偶然にも同じディックであり、容姿も似通っていたことから、吹き替えで視聴していたユーザーにはほとんど交代が気にならなかったという声もあるようだ。実は、2代目のサージェントのもとに最初はオファーが来ていたが、諸事情により受けることができなかったのだという逸話もある。

本作が日本に与えた影響がもう一つ。「魔法少女」を題材とした作品『魔法使いサリー』は有名であるが、この「サリー」を生み出すきっかけとなったのが「奥さまは魔女」だった。

1966年に日本語吹き替え版が放送を開始、それから半年程度で横山光輝による「サリー」の連載が決まり、予告掲載号だけで東映からアニメ化のオファーがなされるという異例のスピードで展開していったとのこと。

因みに、「サリー」の後番組は赤塚不二夫の『ひみつのアッコちゃん』であるが、実のところ「アッコちゃん」は「奥さまは魔女」放送よりも早く連載されている。しかし、結果としてアニメの「アッコちゃん」は「サリー」による魔法少女的な設定(呪文と唱える、パートナー的動物の存在など)を引き継いだ形で設定が新たに組まれており、結果として「魔法少女」スタイルに更新されることになったという経緯がある。

その意味では、「奥さまは魔女」よりも早く登場した「アッコちゃん」も、その実「奥さまは魔女」の系譜の中にあると言っても良いのかもしれない。

【参考記事・文献】
https://labo77.com/entry/2021/08/02/235435
http://whereis.seesaa.net/article/40434083.html
https://piano-fire.hatenablog.jp/entry/20110525/p2
https://dic.nicovideo.jp/a/%e5%a5%a5%e3%81%95%e3%81%be%e3%81%af%e9%ad%94%e5%a5%b3

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【文 黒蠍けいすけ】

画像 ウィキペディアより引用