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ロボットアニメ「ボルテスⅤ」がフィリピンで革命が起きるきっかけになった!?

超電磁マシーンボルテスⅤ(以下ボルテスV:Vはファイブと読む)は、1977年から78年にかけて放映されたテレビ朝日・東映・東映エージエンシー製作のロボットアニメ。

「長浜ロマンロボット3部作」の第2作として知られ、悪の異星人から地球の平和を守るため、5人の少年少女が戦うストーリー構成で、のちに『ボルテスV レガシー』として実写化が発表、2024年10月に日本にて全国公開された。

本作は、なんといてもフィリピンにおける人気ぶりが象徴的であった。

1978年にフィリピンで放送された本作は、当時で視聴率50%を優に超えるほどに絶大な人気を誇ったと言われている。この人気は親子三代に渡って継がれているとも言われ、本作の主題歌はフィリピンの第2の国歌とも称され、現地の人々が日本語のまま歌うことができるそうだ。

天皇陛下がフィリピンを訪問した際には国民が主題歌を歌って迎えた、安倍元総理夫妻の訪問時には、昭恵夫人が訪ねた施設で若者たちが本作のエンディングを歌って迎えた、などの逸話も残っている。

主題歌を歌唱した堀江美都子がのちに訪問した際は国賓級の扱いをもって迎えられ、作曲者である小林亜星が死去した際には、駐日フィリピン大使館から「深い哀しみを覚えております」「素晴らしい音楽の贈り物に感謝申し上げます」とコメントされた。

フィリピンでの認知度が90%を超えていると言われるボルテスVであるが、これについてはとある都市伝説が囁かれている。それは、ボルテスVによってフィリピンに革命が起こったというものである。

当時、フィリピンではフィルディナント・マルコスが大統領として政権を握っており、当選当初から利権によって私腹を肥やし、裏社会の人脈で反対派を黙らせるといった独裁政権をしいていた。およそ20年に及ぶ独裁政治は、1983年に政敵のベニグノ・アキノがマニラ空港で暗殺されたことをきっかけに政権への反発が苛烈化、1986年にマルコス夫婦が亡命したことで独裁政権がついに打倒された。

ピープルパワー革命(フィリピン二月革命)と称されるこの出来事は、フィリピンにおいて民主化を実現させた革命として知られているが、これを起こさせる引き金となったのが、ボルテスVだったのではないかというものだ。

実は、ボルテスVは当初全話放送されてはおらず、残り4話を残すところで急遽打ち切られていて、本作の終盤の内容が”革命”を想起させるものであったために政権が放送を打ち切らせたという噂もある。

実際、フィリピンにおいて本作が人気となった要因の一つには、「圧政に抗う」「弾圧を受ける側が解放に向けて奮闘する」といったストーリー展開が多くの人々の心をつかんだことにあると言われて、本作が革命の原動力に繋がった可能性が示唆されている。

ただし、これについてはそのソースも曖昧であるため、本作によって革命が助長されたという証拠は無い。逆に、現地取材や当時の書籍やメディアなどの言説から見ると、「子供がアニメに夢中になりすぎて教育に良くない」というPTAからの批判が強まったために打ち切られたというのが事情として有力であるようだ。

ただし、残りの4話についてはその後マルコス政権が倒れたのちに再放送されたことで改めて公開された。独裁政権がアニメと同じような結末を迎えたということが、このような都市伝説を生んだ大きな要因だったのだろう。

それを含めて、フィリピンにおける本作の人気がいかに熱狂的であるのかも改めて垣間見ることができる。

因みに、冒頭で触れたボルテスVの実写化作品制作はフィリピン発であり、しかも東映からのライセンス承諾を得ているれっきとした公式作品の位置づけとなっている。

【参考記事・文献】
https://x.gd/NaXnX
https://yukashikisekai.com/?p=127027
https://www.y-history.net/appendix/wh1703-061.html
https://x.gd/cfpqG
https://news.yahoo.co.jp/articles/44d3e4c292a3dc6e0ab639a3e44a65c7b418b90a
https://lotusjps.com/voltesv/

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【文 ZENMAI】

画像『ボルテスV レガシー