サブカル

記念日も制定された「人造人間キカイダー」がハワイに与えた文化的影響

ハワイといえば、日本の芸能人が新年を過ごす場所というイメージが強いという人もいるだろう。日本人にとって、最も人気の観光地としても知られるハワイは、明治時代から多くの日本人移民が流入して来たという歴史もあり、日本の習慣風俗が強く浸透しているのも事実だ。

それと同時に、現在では日本の数多くのサブカルチャーがハワイの人々の暮らしに溶け込んでいる。中でも、今日に至るまで根強い人気を誇っているのが特撮ヒーロー番組『人造人間キカイダー』である。

「人造人間キカイダー」は、石ノ森章太郎・原作の特撮作品である。人造人間であるキカイダーが生みの親である博士を犯罪組織から救い出すというストーリーとなる本作は、『仮面ライダー』における変身ヒーローブームに触発された形で生み出されたヒーローモノであった。

左右非対称のデザインや、主人公を打倒することのみを目的として生み出されたアンチヒーローの存在など、後年の特撮設定に多大なる影響を与えることになったもの、本当の敵は裏番組と言わんばかりに当時絶大な人気を誇った『8時だよ!全員集合』の存在で視聴率に大変苦戦をした。

キカイダーは、日本での放送終了後ハワイへ活躍の場を移すことになる。

ハワイでは、1960年代から日本のテレビ番組の放送希望が日系人の間で高まり、1967年には海外で初の日本語テレビ局「KIKU-TV」の放送が開始。1973年、ハワイでキカイダーが放送されるや否や大ブームを巻き起こし、「KUKI-TV」史上最高視聴率24%を記録するほか、当時ハワイのショッピングセンターで開催されたサイン会は、会場に1万人が押し掛けたために中止されてしまったというエピソードが残っている。

現地のディスコでは、主題歌の「ゴーゴー・キカイダー」が流れ、若者が踊るという現象すら起こったという。

ハワイにおけるキカイダブームは、周期的に波があるということだが、強く根付いた作品であることには変わりない。その証として、「人造人間キカイダー」とその続編である「キカイダー01」で主人公役を務めた俳優の伴大介と池田駿介がハワイ名誉市民に認定され、さらには4月12日を「ジェネレーション・キカイダー・デー」、 5月19日を「キカイダー・ブラザーズ・デー」として記念日が制定されるにまで至っている。

これは、子供の頃にキカイダーを見て育った人間が成人したこともそうだが、特に本作が全体を通して訴える「人工知能の善悪とは」「機械が人間と同じ心を持てるのか」といった道徳的命題が教育的価値のあるものとして高い評価を得ていることも影響しているという。

ハワイにおいてキカイダーは、単に娯楽という立場を超えた人間の成長と共にある重要な手本として刻まれている。今日のハワイで、日本の伝統文化やサブカルが浸透し続けているのは、キカイダーがあるからと言っても過言ではないだろう。

【参考記事・文献】
人造人間キカイダー
https://x.gd/b2T5b
【なぜハワイは特撮ヒーローの聖地となったのか?】ハワイで戦う日本特撮ヒーロー達の歴史と未来とは?
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/a49f31bbb0f23e358801ef9f40d581f8da409c80
【なぜハワイは日本の特撮ヒーローに大熱狂したのか?】東映ヒーローとハワイ政治の知られざる関係とは?
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/6d26f17a10e268210bcb4b3e4737e63785597cb5
第3回 ハワイの人々を魅了してやまないKIKAIDAとは?
https://www.hawaii-arukikata.com/tokushu/hitorekishi3.html

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【文 ナオキ・コムロ】

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