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きっかけは一つのつぶやきだった?!「マンボウ」最弱伝説の真相

マンボウは、フグ目マンボウ科に分類される魚であり、最大で全長3メートル、体重2トンを越えると言われる世界最大級の硬骨魚だ。円盤状の体に大きく発達したヒレというその不思議な見た目を、水族館などで目にした人も多いだろう。

マンボウという名前を聞いて、些細なことですぐ死んでしまうという「最弱の生物」だとイメージする人は少なくないだろう。このマンボウ最弱伝説は、2013年ごろになってからネット上で広く語られるようになったものだ。

例として次のようなものがある。「小魚の骨が喉に詰まって死ぬ」「近くにいた仲間が死亡したショックで死ぬ」「海底に潜水して寒さのあまり死ぬ」「水中の泡が目に入ったストレスで死ぬ」「寄生虫を殺すために水面でジャンプし着水の衝撃で死ぬ」等々。

こうした数々の最弱伝説が広まったことにより、2014年には「生きろ!マンボウ-3億匹の仲間はみな死んだ-」という育成ゲームまで登場し500万ダウンロードを突破した人気ゲームともなった。

だが、実はこれらのマンボウ最弱伝説は、現在そのほとんどが否定されている。実際に水族館で飼育している職員の証言によれば、マンボウは時折水面をジャンプすることはあるが着水の衝撃で死んだことはない、仲間が減ることよりも強い縄張り意識から別の仲間が増えることのほうがストレスを受けやすい(かといって死ぬことはない)、気泡が目の中にできることは魚類一般に言える話である、等々。

ただし、消化能力が弱いことは確かであり、海中ではクラゲなどを食しているが魚をそのまま摂取した場合は、骨が腸を傷つけ最悪の場合死ぬケースもあり得るという。




このように、マンボウはイメージするほどに最弱というほどでもないのだが、こうしたマンボウ最弱伝説が語られるようになったのには、いくつかの理由が考えられている。まず、マンボウは泳ぎがあまり上手くないのである。最弱伝説では「直進しかできない」と言われていたが、実際はそのようなことはなく曲がることはできる。

それでも、上手く曲がることができずに壁や床にぶつかることが多々あるという。また、マンボウが3億もの卵を産むという多産さも、あまりの弱さから生き残ることのできる個体を増やそうしているという理屈につながったのだろう。

そもそも、こうしたマンボウの最弱伝説はなぜ登場したのか。実は、旧Twitter(現X)にてある人物がつぶやいたツイートが発信源であったと言われている。彼は現在も活躍する非常に人気の高いイラストレーターであり、その描かれたイラストやTwitterでのつぶやきの多くが面白ネタで溢れていたのである。

ある時、彼はそのツイートに上記のようなマンボウ最弱説を書き込んで投稿、瞬く間に拡散されることとなったのだが、当人ははじめから”ジョーク”のつもりであったという。のちにニュースでも取り上げられるほどに反響を呼んでしまったことで、事の重大さを鑑みて当人が謝罪するに至った。

マンボウ最弱説は、刺激的なデマ情報がいかにネット上で拡散されやすいかを明示する格好の事例になったことは間違いないだろう。水族館などでマンボウを見かけた際、自慢げにマンボウ最弱伝説を披露しても、飼育員に笑われてしまう可能性があるのでご注意を。

ちなみに、2023年でこの都市伝説は10周年を迎えている。

【参考記事・文献】
「マンボウの都市伝説流行10年祭」の様子と当時を思い出す人々
https://togetter.com/li/2200345
マンボウ最弱は本当?ありえない死因が広まった理由は?
https://x.gd/N1j00
【マンボウ最弱説・死因は嘘!】マンボウのリアルをお伝えします
https://aquariumpicks.com/about-the-weekness-of-sunfish#index_id8
マンボウ最弱伝説はウソ 「ジャンプで衝撃死」「太陽光で死ぬ」
https://withnews.jp/article/f0140903000qq000000000000000W00o0401qq000010767A

(黒蠍けいすけ 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

Markus KammermannによるPixabayからの画像