バロム・1(バロムワン)は、『週刊ぼくらマガジン』にて1970年からおよそ1年間連載されていたさいとう・たかをの漫画作品。1972年には特撮ドラマ『超人バロム・1』として実写化されており、原作漫画とは大幅に変更されたデザイン・設定・ストーリーとなっていた。
このドラマ作品では、全国紙の見出しに端を発したと言われる「ドルゲ君事件」がよく知られている。
本作にて悪の親玉であるドルゲと同じ名前を持つ日本在住のドイツ人から「息子がいじめられた」とのクレームが寄せられ、以来放送時に「フィクション」であるとのテロップが出るようになったと言われている、いわゆる都市伝説だ。
のちに、この情報は少々大げさに発せられていたことが判明。実際は「実在の人物とは無関係だと番組内で発信して欲しい」という程度の要望だったと言われている。一方で、ソ連のスパイであったリヒャルト・ゾルゲに名前が近いことから、一部活動家より抗議されたということは実際にあったそうだ。
ドルゲ君事件は誇張された事件であったことには間違いないが、おそらくそのような話に信憑性を持たせるような要素が本作にあったということも事実だろう。
その最大の要因は、ドルゲ魔人と呼ばれる怪人たちの存在だ。
あらゆる特撮作品の中でも、ドルゲ魔人の造形はきわめてグロテスクなものとして知られており、そのあまりの気味悪さゆえに苦情が殺到したほどだと言われている。だが、その一方でそうした醜悪なデザインこそが子どもたちの心をつかんだとも言える。
ドルゲ魔人は、大きく分けてドルゲの細胞を動植物に移植して生み出されたタイプと、細胞そのものから作り出したタイプの2種類があり、特に後者「人体魔人」と呼ばれるクチビルゲ、ヒャクメルゲ、ノウゲルゲなどといった、人体の一部を怪人化させたその造形はインパクトの強いものであった。
その中の、クビゲルゲについて、かつて一つの噂が囁かれたことがある。
発端は、ダウンタウンの『ガキの使いやあらへんで』でのフリートークコーナーでのこと。あるお便りに回答する松本人志が、「何もしてないのに見た目だけで敵役を退治するのはおかしい」という旨の発言をし、それに浜田雅功が「窓から覗いただけのやつとかな」と反応、それがバロム・1のクビゲルゲであることが触れられたのだ。
クビゲルゲは、首から上の頭部が切断されたような造詣をした怪人であり、第28話『魔人クビゲルゲが窓からのぞく!!』にて登場。タイトルからも確かにそのような文面が見られるが、本当にこのクビゲルゲが窓からのぞいていただけで倒されたかと言えばそうとも言えず、本編では占い師に化けて女性たちを「ドルゲの首飾り」というアイテムを使用して連れ去り、首飾りを量産させるために女工として働かせていた。
そのため、窓からのぞいていたために倒されたというわけではないとも言えるだろう。
また、最も子供たちにトラウマを与えたと言われるドルゲ魔人もいる。それが、第19話『魔人ヤゴゲルゲが子守唄で呪う』に登場したヤゴゲルゲである。
その名の通り、ヤゴから生み出された魔人であり、遊園地のお化け屋敷に潜んで”子守唄”を歌って子供たちを眠らせ拉致し、戦闘員アントマンに変えることを使命としていた。
作中にて「ヤゴゲルゲの子守唄」は、アントマンの脳細胞を破壊、バロム・1すらも手足がしびれ、意識を失うといった効果がもたらされた強力なものであり、低音で響き渡るメロディも合わせ、子供たちのトラウマとして強烈なインパクトを与えることとなった。
しかし、それほどに一部では非常に知られたヤゴゲルゲの子守唄は、2007年に発売されたバロム・1の35周年記念のBGM・音楽集に収録されることはなかった。悲しいことに、マスターテープが発見されなかったことが原因だという。
【参考記事・文献】
・https://tensai.work/baromu1-28/
・https://pulog1.exblog.jp/2574734/
・https://tensai.work/baromu1-19/
・https://x.gd/wzcqT
・https://x.gd/GZbOP
・https://dic.pixiv.net/a/%E3%83%89%E3%83%AB%E3%82%B2%E9%AD%94%E4%BA%BA
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【文 黒蠍けいすけ】
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