1969年から2011年までの42年に渡り放送されていたテレビ時代劇シリーズといえば『水戸黄門』。テレビドラマについては、テレビ放送黎明期から複数作られているが、現在まで「水戸黄門」として一般的に浸透しているものといえば、このナショナル劇場における本作だ。
TBSを代表する時代劇として人気を博したが、時代劇の人気低落には打ち勝つことができず2011年に完結。のちにBS-TBSにて武田鉄矢が黄門さまを演じる新シリーズが制作されていた。
本作の構成は、水戸光圀(通称ご隠居)とそのお供である佐々木助三郎(助さん)、渥美格之進(格さん)たちを引き連れ、諸国を漫遊するというストーリーで、旅の町人を装い旅の途中で出くわす庶民の問題を探り、悪党を成敗したのちに次の地へ旅立つというのがお馴染み。
毎回番組終盤には、悪党に正体を明かす際に取り出す三つ葉葵の印籠が、8時45分ごろと時間まで大まかに定まっていると言われ、また通俗的にも「逆らえない」ことを表す慣用的な言い方で「黄門さまの印籠」といった用語が用いられることもある。
本作は、松下グループの単独スポンサーであったことで知られる。
大正時代、松下幸之助が大阪店王子前で二股ソケットを販売していたところ、常陸水戸藩の家老三木之次の子孫であった人物が通りかかり、『必ずこの商品は売れる!』と思い松下に出資をした。これによって事業を拡大することができた松下は、この恩を返そうと思い立ち、のちに事業が成功してから三木家に深い縁のある水戸徳川家の「水戸黄門」をドラマ放送を開始、水戸黄門の名を世間に広めることとなったという。
「人生楽ありゃ苦もあるさ」でお馴染みの主題歌である『ああ人生に涙あり』は、歴代の助さん格さん役が歌唱を担当するのが通例となっているが、橋幸夫、舟木一夫、西郷輝彦の御三家がソロとして歌唱を担当していたこともあった。
本来は4番まであった曲であるが、4番の歌詞が3番のものとして歌われるようになったため、作詞者である山上路夫すら存在を忘れてしまっていたという。「幻の4番」というように言われているが、正確には幻の3番とも言えるだろう。
時代考証よりはドラマとしての面白さを押し出すため、風車の弥七、かげろうお銀のほか、霞のお新や柘植の飛猿といったキャラクターも登場しており、中でも非常によく知られた存在としてうっかり八兵衛がいる。
演者が交代されるのは長寿番組の常である、そんな中で高橋元太郎が演じるうっかり八兵衛は、役者変更が一度もなされなかった唯一のレギュラーメンバーとして知られている。因みに、里見浩太朗はテレビシリーズで助さんと黄門様、劇場版にて格さんを演じているため、メイン3役を演じたことのある唯一の人物でもある。
うっかり八兵衛は、光圀の住まいである西山荘の使用人であり、旅では町人を偽装するためのカムフラージュの役目を担って同行する。
コメディリリーフ、いわゆる滑稽な役回りとして知られ、食い道楽でつい余計なことを口走ってしまうため、そのたびに「うっかり」と言うのが口癖となっている。トラブルメーカーになることも多く、時折「年寄り」「頑固」「物好き」など光圀の悪口を言って機嫌を損ねられてしまうことも多い。
水戸黄門の都市伝説として最も有名なものに、このうっかり八兵衛にまつわるものがある。
それは、劇中に八兵衛が外来語を使用してしまったことがあったというものだ。例としては、「ご隠居、ファイト!」をはじめとして「この宿はサービスがいい」「逃げるなら今がチャンスです」といったものが上げられているが、かつてテレビ番組『トリビアの泉』にて880話分の確認が行なわれたところ、そのような”うっかり”は無かったということで、この都市伝説は晴れて(?)潔白となった。
ただし、この都市伝説の元になったと思われるエピソードがあるという。それは、当時時代劇初出演であった渡哲也が登場した時のこと。
第1部25話「旅烏の子守唄・庄内」にて渡は、何者かに追われる渡世人・弥之吉を演じ、連れの勘太(真田広之)という少年を連れて旅をする人物として登場、その回の放送にて茶屋で湯呑みを受け取った際に、「サンキュー」と言ってしまったことがあった。
無論、この場面はNGとなりオンエアはされなかったが、このエピソードがのちにうっかり八兵衛の”うっかり”として派生し広まっていったのではないかと考えられている。
因みに、この時はまだうっかり八兵衛は役として存在していなかった。
【参考記事・文献】
・https://x.gd/oQn9o
・http://lunac.seesaa.net/article/98077867.html
・https://kaigoshoku.mynavi.jp/contents/kaigonomirailab/news/today/20230119_00/
・https://blog.goo.ne.jp/sakura707_2006/e/864089720b379b0ba1e7acf2cb8426b6
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【文 黒蠍けいすけ】
画像 ウィキペディアより引用