団三郎狸は 新潟県佐渡市に伝わる化け狸であり、「屋島の太三郎」「淡路の芝右衛門」と並び、「佐渡の団三郎」として日本三名狸の一体に数えられている。
二ツ岩団三郎とも呼ばれており、佐渡市相川下戸村には団三郎狸を祀る二ツ岩大明神が存在し、人々の信仰を今なお集めている。
団三郎狸は、佐渡における狸の頭領と言われており、人を化かしてはそれを面白がっていた。ただ、その一方で人間を相手に金貸しをしたり、あるいは元手となる金を自分で稼ぐような商売をしたりと、化かし化かされを超えた人間との関係を持っていたという。
人間から金を奪う際は悪人に限っていたとも言われ、佐渡の狸の頭領となりえたのも、義理堅い親分気質によって部下たちから慕われていたからであったようだ。その一方で、団三郎は狐を大いに嫌っていたとされ、佐渡に狐がいないのは団三郎狸が全て追い払ってしまったためであるとの伝承もある。
佐渡には団三郎狸をはじめとした狸にまつわる民話などが多く残っているが、なぜこれほどまで佐渡に狸の伝承が残っているかというと、佐渡の金山が大いに関係している。佐渡は、金が取れる島として平安時代から有名であり、江戸時代に入ってからは一気に鉱山開発が進み、幕府の重要な財源にもなっていた。
平成元年に、資源の枯渇によってその歴史に幕を閉じるまでは日本最大の金の産出量を誇っており、その金の豊富さたるや、売られていたネギの泥に砂金が混じっていたために、人々がこぞって畑の土を取りに来てしまい農家が荒らされてしまった、という逸話が残るほどであったという。
その金山において重要だったのが”狸の毛皮”であった。金を精錬する際に用いられる鞴(ふいご)の素材として、狸の皮が非常に重宝されたのである。実は、当時佐渡には狸が住んでおらず、本土から持ち込まれ野生化したのが、佐渡に生息する狸として定住していったというわけだ。
先の団三郎狸も、金貸しのために拾い集めた金粒を使用していたという話があることから、この金山と狸の関係が非常に強いことが伺える。
このように、金山の存在が元となって狸との関わりを深めた佐渡であるが、その頭領たる団三郎狸にはモデルになった人物がいると言われている。
一説によると、その人物は名前を「団三郎」と称し、佐渡で繁殖用の子狸あるいは狸の皮を売って生計を立てていた越後の商人であったと言われている。この商売によって島民から敬われた末に、売り物の狸も氏神として祀られるようになったという。
団三郎狸が、商人であった団三郎という人物を基にした可能性は充分に考えられるだろうが、狸を売っていた本人すらも狸として信仰されるようになっていったと考えると、いささか皮肉めいたものも感じられる。
【参考記事・文献】
団三郎狸
https://dic.pixiv.net/a/%E5%9B%A3%E4%B8%89%E9%83%8E%E7%8B%B8
第十回 日本三名狸伝説を巡る旅 新潟編
https://www.omega-com.co.jp/ja/column/youkai/column10/
団三郎狸
https://www.nichibun.ac.jp/YoukaiCard/2410039.html
佐渡の狸の総大将「団三郎狸(だんざぶろうだぬき)」
https://youkaiwikizukan.hatenablog.com/entry/2013/07/15/230327
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【文 ZENMAI】
画像 ウィキペディアより引用