不協和音と言えば、2つ以上の音が重なった時に調和されず相性が悪い和音の響きを指す。通常は、避けられるものとなっているが、不気味さや恐怖感などを煽るためにメロディの中でわざと用いられることもあることは、イメージしていただければおわかりのことと思う。
その不協和音の中で、かつて最も不快な音と呼ばれていたのが通称「トライトーン」と呼ばれる音程であるが、そのあまりに不快な音から悪魔が宿るとも言われ、別名「音楽の悪魔」あるいは「悪魔の音程」と呼ばれている。
トライトーン(三全音)とは、全音3つ分(半音6つ分)を意味している。実際に鍵盤を見るとわかるが、例えば白鍵「ファ」「シ」の音がある。「ファ」の音から黒鍵を挟んだ「ソ」が全音の1つ目となる。ここからさらに、「ソ」と「ラ」の2つ目の全音、「ラ」と「シ」の3つ目の全音と、合計で3つ分の全音が出来上がり、これこそがトライトーンの関係になっているというわけだ。
この音程は、前述したように封印されていた時期があり、17世紀初頭から18世紀半ばと言われるバロック期より以前の中世では、非常にタブー視されていたと言われている。禁止されていたというような記録は残っていないものの、そのあまりの不快さゆえに「神に対する冒涜」とされ、教会の場に似つかわしくないということから積極的に活用されることがなかった事は確かであるようだ。
特に、「ファ」と「シ」の不協和音はよく知られており、「シ」の音については音楽の悪魔を”誕生させやすい”といったことでシの音を意図して使用しない楽曲が多く存在していたと言われている。
かつてはタブー視すらされていたというこの「音楽の悪魔」は、バロック期以降は徐々にではあるもののその音程を活用する曲が見受けられるようになった。とはいえ、それでも抵抗感はやはり残っていたらしく、かのバッハの楽曲内でも、避けていた形跡が見受けられているという。しかし時代を経て、現代においてはポピュラー音楽において欠かせない音楽表現として注目されているのも事実。
この音楽の悪魔は、特にヘヴィメタルが多用することでも知られているが、そのシンプルな技術を一躍世に広めたのは1970年に発表された、ヘヴィメタルの祖と呼ばれるロックバンド『ブラック・サバス』のアルバム内における、トニー・アイオミのギターリフであったと言われている。
彼は音楽理論に明るいというわけではなかったが、イングランドの音楽家グスターヴ・ホルストの組曲『惑星』の一部を聴き、そのムードをギターで再現する中で不穏な響きの虜になっていったことがきっかけになったという。彼のその不穏なコードは、彼らのバンドが成功をおさめるにつれてヘヴィメタルの定番テクニックとして浸透していったという。
これについては、是非動画などで実際に耳にしてみることをお勧めする。これを確かに不気味と思うか、新たな音楽の好みと感じるかはあなた次第。
Chromatic scale on C: full octave ascending and descending
【参考記事・文献】
トライトーンとは?~不協和を作る悪魔の音程~
https://tabatalabo.com/tritone
“音楽に潜む悪魔”と呼ばれたコードの歴史
https://www.fender.com/ja-JP/articles/the-devils-chord-the-eerie-history
「十二音技法」 ~悪魔の音列~ 音楽を一瞬にしてカオスにしてしまう方法解説
https://x.gd/Wptkv
【音楽理論講座】「悪魔の音程」トライトーンとは?なぜ不安定な響きになるのか解説します
https://pinformation.net/tritone/
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【文 ZENMAI】
Selline SellineによるPixabayからの画像