古代マヤやアステカなど、中南米の古代文明では血なまぐさい生け贄の儀式が行われていた事が判明している。生け贄の儀式にのみ使用された器具等も多数出土している。
例えばこちらの頭蓋骨のような形をした器具もその一つだ。この器具は笛の一種で、息を吹き込むとまるで恐ろしい悲鳴のような甲高い音が鳴ったとされている。この笛は風の神エエカトルに生け贄が捧げられる直前に使われたと考えられている。
この笛はいくつか発見されているものの、いったいどんな音がするのか解っていなかった。そこで研究者たちは、1990年代にメキシコで発掘された保存状態の良い唯一のモデルを基に3Dプリンティング技術を使って再現することに成功。生け贄の儀式に使われた世界で最も恐ろしい音のひとつが、科学の力で現代に甦ったのである。
再現された笛からは血も凍るような悲鳴のように聞こえる音が響き渡った。再現に携わったアクション・ラボの専門家であるジェームス・オルギル氏は、次のように説明する。
「これは『世界で最も恐ろしい音』とされています。音だけ聞いた人には信じられないかもしれませんが、これは人間の悲鳴そっくりです。死の笛が発する音は、生まれながらにして恐怖を心に叩き込むものなのです」
オルギル氏によれば、この笛は人間の喉仏のような形をしており、1000hzの周波の音を最も強く発するとのこと。人間が発する悲鳴のうち、聞き手が恐ろしいと感じるものは1000hz付近だそうなので、似た音を発するように設計されたのではないかと彼は述べる。
今回3Dプリンターで作られた笛は4種類。そのうちの1つは女性が叫んでいるように聞こえるものだ。この笛はメキシコ・シティで発見されたもので、再現された笛を最初に吹いた男は、同僚をとても怖がらせ、泣かせてしまったため二度と吹かないと誓ったとか。
しかし、実はこの笛は彼が実際に吹いてみるまではただのおもちゃだと思われていたそう。この思いつきが『世界で最も恐ろしい楽器』を現代に目覚めさせることになろうとは、恐らく研究者も思っていなかったのではないだろうか。
ちなみに『世界で最も恐ろしい楽器』の音はYouTube等で視聴できる上、現在ではこの笛のレプリカや「吹いてみた」動画も公開されている。気になる人は聞いてみてはいかがだろうか……ただし、本物の悲鳴に聞こえるので、音量と周囲には気を付けた方が良いかもしれない。
(田中尚 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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