座敷わらしが住んでいると噂されているのが、岩手県金田一温泉にある老舗旅館・緑風荘である。同旅館は、夭折した先祖の子供霊が“座敷わらし”として守護していると言われているのだ。
2009年10月に発生した火事により全焼してしまったが、再建され2016年に営業再開している。だが、2009年に起きた火事の際に、不思議な体験談が報告されている。
緑風荘入り口の斜め向かいにお住まいの方は、内装関連の企業を経営されているが、緑風荘の火事当日奇妙な物体を目撃したという。
この方は、当時テレビ番組の取材で火災直後の現場に急行した山口敏太郎とテレビクルーを快く目撃現場に案内してくれた。
現場は、ちょうど緑風荘の正面入り口と道を挟んで向かい側にある、傾斜地にある畑であった。
「この畑がうちの畑なんですよ」
「なるほど、確かに現場とは至近距離ですね」
距離的にかなり近い。火事の当日は、緑風荘から飛来した火の粉がこの畑に降り注いだという。
「しかも、まずいことに火の粉が切り株に降りかかり、燃え始めたんです」
「それは、びっくりしますね」
筆者が相槌を打つ。
「だから、一生懸命消してたんですよ。その時にね、妙なモノを見ましたね」
「奇妙なモノ… ですか」
火事の当日、大量に降り注いだ火の粉のせいだろうか。自分の畑にある切り株から炎があがり、焦ったその人は、必死に鎮火作業に当たっていた。
「ふうぅ、これぐらいでいいかな」
汗をぬぐい、ふと顔をあげると、奇妙なモノが燃え盛る緑風荘から飛び出した。
―――炎の中から、半透明な球がぷかりと虚空に飛び出したのだ。
(んんっ? なんだ、あれは)
目を凝らしてみると、半透明の球がふらふらと緑風荘の方から飛んでくる。
(おいおい、こっちに来るぞ)その球は人間が歩くようなスピードで、地上から1.5m~2mの高さを保ちながら、斜面を登ってくる。
(ああ、あれはなんだろう)呆然とするその方の前を―――球は音もなく(すーっ)と通過した。
この話を聞いた筆者は興奮を抑え切れなかった。
「その半透明の球は、どこに行ったんですか」
その方は斜面を登りきったあたりを指差した。
「あぁ、この斜面を登った場所にある。五日市(緑風荘のご主人)さん、先祖の墓の方まで飛んでいったんだよ。あれはやはり座敷わらしだったのかね」
やはり、類焼や人的被害が無かったのは座敷わらしが守ってくれていたからだったのだろうか。
なお、このインタビューや取材の模様は筆者が原作を担当した「オカルト博士の妖怪ファイル」(HONKOWAコミックス)でも紹介させて頂いた。他にも取材の模様や火災になる前の緑風荘に宿泊した際に起きたこと等も紹介しているので、興味のある人は是非読んでみて欲しい。
なお、ATLASでは座敷わらしに関するアーカイブを幾つか紹介している。原田龍二、座敷わらし好きなのに不幸に!?、置き薬のビルディングに座敷わらしが住んでいる、緑風荘の座敷わらしは2人いる?、SNSで拡散座敷わらしの写真、シェアすると幸せになれる?、新潟の越後湯沢に座敷わらし出現!老夫婦の家に泊まろうとした、つのだじろうが描いた座敷わらしの絵が瞬きする などである。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)
※画像 ©PIXABAY