日本に古来から伝わるモンスター、妖怪。
昔の人々が、理解の出来ない事象や見たこともない動物の姿、恐怖の対象に姿を与え解釈しようとした結果生まれたものが妖怪である。
妖怪の持つ素朴ながらも魅力のあるキャラクター性は色あせることなく、現代でも妖怪をモデルにした創作物が日々生み出され、多くの人達を楽しませている。
そんな妖怪たちの姿を書き記した図鑑のような書物は当時から多く出回っていた。有名なものでは鳥山石燕の「画図百鬼夜行」や、江戸時代に成立した「稲生物怪録」なども該当するだろう。中でもその内容で近年注目を集めているのが「姫国山海録」だ。
宝暦12(1762)年という記述が序文に見られるため、成立もその年代ごろと見られている。作者は南谷先生となっているが、彼がどのような人物なのかは分かっていない。
中国の地理書にして妖怪が多く収録されている「山海経」よろしく、日本の山や海に生息している妖怪について、生息地や姿形について記したものとされているもので、本文が漢文で書かれていたり、「和漢三才図会」の引用なども存在していることから、作者は一定以上の知識層にあったことが解る。
この妖怪図録が注目されている最大の要因は、他の書物に見られない多数の妖怪が収録されている点と、何よりその独特の妖怪絵だ。素朴なタッチで描かれ、淡く色付けられた妖怪たちは恐ろしいというよりもユーモラスであり、我々の想像を掻き立ててくれる。
この「姫国山海録」は8月28日まで江戸東京博物館で開催されている「大妖怪展」にて実物を見ることができる。「大妖怪展」には他にも様々な妖怪絵巻なども展示されているので、興味のある人は足を運んでみてはいかがだろうか。
(加藤文規 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)