サブカル

「ザ・カゲスター」 化物が生身の人間をイジメてるみたい、と言われた異色作?!

『ザ・カゲスター』は、1976年に全34話放送された東映の特撮テレビドラマ。社長令嬢・風村鈴子とその秘書・姿影夫が、悪の組織「サタン帝国」から世界を守るため立ち向かうというものである。

最大の特徴は、彼らの”影”に悪を憎む心が乗り移りその分身した影で戦うというもので、非常に異色なヒーローものとしても知られる。タイトルにもあるカゲスターは主人公である影夫のヒーロー名であり、上司であるヒロインの鈴子がベルスターとして活躍する。

高圧電線に触れてしまったことで影を分身させることができるようになったと作中で語られるが、カゲスターの風貌はまさしく電磁波を思わせるような渦巻き模様に、どこか星条旗を思わせるようなスパークリングなマントと、数々のヒーローのバリエーションが豊富だった70年代中期としても奇抜なものとなっている。

また、カゲスターとベルスターの2人によって生み出される意志を持つ影「カゲロベェ」の存在も、アニメ合成という点もさることながら、その一見した不気味さから当時の子供たちに強烈なインパクトを与えることとなった。因みに、ベルスターが毎回のようにパンチラを連発していたため、親御さんからのお叱りも多かったという。

現在では、カルト的人気を獲得している作品の一つとして名前の挙がるカゲスターだが、当時の評判となるとなかなかに厳しかったようであり、試行錯誤の連続であったことがうかがえる。

『仮面の忍者赤影』『仮面ライダー』『悪魔くん(テレビドラマ版)』を担当したプロデューサー・平山亨(本作では原作”八手三郎”名義)は、当時主流だった着ぐるみの敵ではなく、悪事を働く人間を敵にしたいと考えていた。

だが、カゲスターそのものの見た目が化物じみていたということもあり、「人間離れした超人が生身の人間と戦うのはいかがなものか」「化物が人間をいじめてるように見える」という意見もあったらしい。なお、カゲスターのデザインは宇宙刑事シリーズなどで怪人デザインを多く手掛けた野口竜、東映特撮としては初参加の作品となったという。

また、敵が人間ということで、本作の初期は毎回違った悪者とその組織が登場しており、悪者は仮面をかぶった人間であった。悪の組織となると、その目的は世界征服が定番ともなるが、当の彼らの目的は個人的な恨みや欲望を動機に据えた単なる犯罪者だった。

結局、このスタイルは子ども受けせず、物語の途中から非常にわかりやすい形で登場することになったのが悪の組織「サタン帝国」であり、怪人を製造し、かつ人間の3倍の力を持つ戦闘員という存在が加えられた。

本作の悪の組織の誕生には、非常に複雑な事情があったのである。

【参考記事・文献】
https://x.gd/Q5bhz
https://showa-archives.com/kage-star/
https://x.gd/p7EuB

【アトラスニュース関連記事】
「実写版・悪魔くん」原作に無いオリジナル要素の数々は水木本人のアイデア!

障子に映し出される謎の影「影女」を描いた鳥山石燕の意図

【文 ZENMAI】

画像『ザ・カゲスター VOL.1 [DVD]