ゴジラと言えば、言わずと知れた東宝制作の怪獣映画作品に登場する怪獣の名前だ。「キングコング」と並び、世界で最も有名な怪獣の一つと言われており、1998年にはハリウッド版「GODZILLA」も公開され、賛否は別として大きな話題を呼んだ。
海底深くに眠っていたゴジラが目を覚まし、街を破壊していくというのが大元の筋書きとなっているが、ゴジラが目を覚ました理由は、アメリカの度重なる水爆(核)実験によるものと描かれている。
これは、アメリカのビキニ環礁で行なった水爆実験の被害を受けた第五福竜丸事件をもとにしており、元々ゴジラの制作がそうした「アメリカの水爆実験への批判」が込められたものだからと言われる。
しかし、そんなゴジラが予想をはるかに上回るヒットを記録することとなり、続編「ゴジラの逆襲」によって現在までに通じる”ゴジラVS怪獣”というシリーズの流れが形成されることになった。
さて、ゴジラといえばあの定番のテーマ曲。4拍+5拍の独特のリズムを刻むこのメインテーマは、作曲家の伊福部昭(いふくべあきら)によって作曲されたものである。
この通称「ゴジラのテーマ」は、いっとき”緊急地震速報時のチャイム音のもとになった”という噂がなされたこともある。実際は、ゴジラのテーマを基にしてチャイム音が作成されたというわけではないが、全く両者が無関係というわけではなく、なんと伊福部昭の甥である工学者・伊福部達(-とおる)によってチャイム音が作成されたことは事実である。
話を戻してこのゴジラのテーマ、”ゴジラが登場した時に流れるテーマ曲”のイメージが強いが、本来は”ゴジラと戦う人類のテーマ”であり、戦車の出動や戦闘機がゴジラに攻撃を加えるシーンなど人間側の始動や攻撃時にこの曲が流れていたが、今ではすっかり逆転した形で認知されている。
ところで、このいわゆる「ゴジラのテーマ」には原曲があると言われている。
『ゴジラ』が世に出た1954年の6年前、松竹から封切された喜劇映画『社長と女店員』のOPテーマ曲のメロディが、ほぼゴジラのテーマそのものとなっている。作曲はもちろん伊福部昭だ。では、これが大元かと言えばそうではない。さらにこのメロディの元になった曲があるとされている。
1932年1月14日、パリのサル・プレイエルにて、ある曲の初演が行なわれ大成功をおさめた。作曲者は「ボレロ」「水の戯れ」などで知られるモーリス・ラヴェル、曲名は『ピアノ協奏曲ト長調』、1937年に没する彼の最晩年の曲だ。この曲の第三楽章に、ゴジラのテーマと酷似したメロディが一部存在している。実際に聴くとわかるが、ほとんどそのままである。
では、この曲が本当に「ゴジラのテーマ」の原曲と言えるのか?少なくとも、関係が非常に強いとされる根拠として、実は伊福部昭がラヴェルの大ファンだったという話がある。ラヴェルのラの字すら知らなかった学生時代、彼はとあるレコード・コンサートで、まだ初演から数年しか経っていなかったラヴェルの「ボレロ」を初めて聴いた。
延々と繰り返されるスネアドラムと、だんだんと熱量が加わっていく他の楽器の迫力に、彼はすっかり虜になった。彼のラヴェルに対する入れ込みようはあまりにも強く、書類に「ラヴェルと同じ誕生日」と全く嘘の記載をしてしまうほどだったと言われている。
こうした背景もあり、「社長と女店員」のテーマ曲、のちに「ゴジラのテーマ」として知られるあのメロディは、単にメロディを参考したということではなく、伊福部にとってのラヴェルへの最大のリスペクト(敬意)だったのではないかと考えられている。
【参考記事・文献】
・https://www.jihoken.jp/mado/cat1/1558/
・https://renote.net/articles/39741
・https://www.excite.co.jp/news/article/E1331479939967/
・https://classic-info.net/ravel-piano-concerto-g-dur/
・https://www.worldfolksong.com/classical/ravel/piano-concerto.html
・https://dic.pixiv.net/a/%E3%82%B4%E3%82%B8%E3%83%A9%E3%81%AE%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%9E
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【文 ナオキ・コムロ】