おそらく日本映画史上、最もメジャーなキャラクターとして認識されている怪獣王ゴジラ。だが、実はこのゴジラには元ネタともいえるアメリカ映画が存在していたことを皆さんはご存知だろうか?
1953年にワーナー・ブラザーズ映画で製作された「原子怪獣現る」という映画がそれだ。
この映画は水爆実験の影響で太古の恐竜リドザウルスが復活して、現在の街で暴れまわるという内容で、これだけ聞くと物語のプロットは日本のゴジラとそっくりである。
もっとも、発想は似ていても映画として内容も特撮も評価されたのは日本のゴジラの方であった。これは日本だけではなく、アメリカでの評価もそうであった。日本のゴジラはアメリカでも大変な話題作となったのである。
水爆実験の影響で蘇った恐竜が現在の街で暴れるという内容は同じでも、太平洋戦争で実際に原爆を落とされた日本人は、アメリカ人以上に原爆の恐怖を感じていた。
「原子怪獣現る」の翌年に日本でゴジラは誕生するのだが、ほとんど同じ時期に製作された作品であるのに、放射能というものへの扱いがこの2作品ではまるで違う。「原子怪獣現る」の方はあくまでも怪獣が復活するキッカケとして水爆実験を用いているだけなのに対して、ゴジラでは水爆実験の影響で復活したゴジラが東京に上陸することで、民衆は戦争のことを思い出し平和を願うのである。
ゴジラを倒すことが出来るかも知れない兵器を開発した博士は、「この兵器を使えばゴジラは倒せるかも知れないが、原爆以上の武器を人類が使用する未来を生んでしまうかも知れない」と悩む。このような苦悩は「原子怪獣現る」には全く見られないのだ。
結果的にゴジラの元ネタともいえる「原子怪獣現る」ではなく、「ゴジラ」の方が歴史に名前を残すことになったのは、原爆を落とした国と落とされた国の「核」に対する思いの差が大きかったと言えるのではないだろうか。
(監修:中沢健・山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)