銭形平次は、作家・野村胡堂の作品『銭形平次捕物控』に登場する架空の人物である。
神田明神下に住む御用聞き(岡っ引き)の親分であり、子分のガラッ八(八五郎)と共に卓越した推理力で事件を解決に導くいわば探偵役であり、寛永通宝を使用した投げ銭を得意とすることでお馴染み。
大川橋蔵や北大路欣也などが彼を演じるテレビドラマ版も多数制作されて、またその個性的なキャラクター性から、『ルパン三世』の銭形警部や『名探偵コナン』の服部平次など、彼をモデル・パロディ化したキャラクターが登場する作品も非常に多い(『もーれつア太郎』のデコッ八は子分のガラッ八の名前に由来する)。
現在でも人々に親しまれている銭形平次というキャラクター、この「銭形」という名前の由来はなんだったのだろうか。
ある時、野村は文芸春秋から「岡田綺堂の半七捕物帳のようなものを書いて欲しい」との依頼を受ける。まず、どのような主人公がいいかを考えていたその時、窓の外にふと目を向けるとそこには「設計 施工 錢高組」の看板があった。
この「ゼニダカ」という名前にあやかって「ゼニ〇〇」の名をいくつか候補に挙げていくうち、「タカ」を逆にした「ゼニガタ」に決定したという。
このエピソードは、その「錢高組」の公式HPにも掲載されているものである。また、銭形平次の特技である銭を投げるという技の着想は、『水滸伝』に登場する礫投げの名人である没羽箭 張清(ぼつうせん ちょうせい)と、銭の形をした錢高組の社章がモチーフになっているとのこと。
因みに、錢高組は1705年創業のゼネコンであるが、株式会社としての発足は1931年である。何の因果だろうか、この年は「銭形平次捕物控」が文藝春秋オール讀物号・創刊号にて連載が開始した年でもあった。
ところで、都内銀座に「銭形」という和風創作料理店が存在している。
戦後まもなく開店したこの店は、もともと屋台経営をしていた齋藤益夫が「大衆にいつまでも愛される店にしたい」という理想から創業。この時、その「誰からも愛される」というイメージとして真っ先に思い浮かんだのが「銭形平次」であり、「銭形」という名前を店名にしようと思い立ったという。
齋藤が屋台経営をしていた頃の常連だった棋士の原田康夫は、そんな彼の事情を聴きつけて野村と引き合わせるよう知人たちを駆使し、ついに齊藤と野村の面会が実現。のちに野村本人も『随筆銭形平次』で、主人が義理堅くいい男だったため、「銭形」という名前を使うことを許したというエピソードを語っている。
【参考記事・文献】
・https://jiten.info/dic/asia/chousei.html
・https://www.zenitaka.co.jp/topics/zenigata/
・https://www.ginza-zenigata.com/newpage6.html
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【文 ナオキ・コムロ】
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