まるで今にも動き出しそうなほどリアルに描かれた絵。博物館や美術館、時には個人の所有物として所有され、一般公開時に我々の目を楽しませてくれるものである。
しかしそれはあくまで紙などに描かれた絵、実際に動き出す事はない……はずなのだが、絵が動いた!?として話題になる事がごくまれに起きる。
1976年8月20日、朝の情報番組が一幅の掛け軸を紹介した。問題の掛け軸は江戸末期に京都町奉行書の役人であった渡邊金三郎が、近江に滞在中に暗殺された。後に上からの指示で現状の記録用に切り落とされた彼の生首が写され、生々しさと迫力をそのまま残した状態で今に伝わったのである。一説によれば、この生首絵には犠牲者である金三郎の血が使われたとも言われている。持ち主は1972年に京都の古書店で発見して購入、保管していたのだという。しかし、うめき声を上げるなどの怪異が起きたため寺に相談して供養を行ったそうだ。
問題の絵が番組で紹介されて暫くたったとき。カメラに映し出された掛け軸の生首が、なんと目を開けていたのである。現代でも確認できる動画で見てみると、確かに瞼が閉じられていたはずの場所に黒目が存在し、カメラの方をにらみつけているように見える。この模様は数十秒に渡って放送されたため、放送を見ていた視聴者からテレビ局に電話の問い合わせが殺到したという。
果たして、本当に閉じられた目が開いてしまったのか。暗殺された侍の怨霊がこの掛け軸に宿っていたのだろうか?
だが、現在では調査の結果、この現象は幽霊によって起きたものではないだろうと見られている。
まず、大きなハエのような目立つ虫がちょうど瞼の上に留まっていたのではないかとする説。
もう一つは、見る人を驚かせる仕掛けが施された掛け軸だったのではないかとする説だ。こちらは特殊な塗料を用いる事によって、見る角度によって絵が変じて見えるというもので、江戸時代に好事家の間で取引されたという。よく見ると、目が開いたとされる掛け軸は若干斜めの角度から写されている。この絵も予め目が開いた状態を描いた後、瞼の部分に別の塗料を塗って隠していたのではないかというのだ。
※写真はYOUTUBEからのキャプチャ
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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掛け軸の目が開く