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ヒューマニティ描いた刑事ドラマ「特捜最前線」…ド派手な演出は出演者の影響だった

特捜最前線は、1977年から1987年まで放送されていた刑事ドラマである。警視庁特命捜査課に所属する刑事たちの捜査と苦闘、そして彼らのヒューマンドラマを描いた作品でもあり、1984年には最高視聴率27.4%を記録した人気ドラマだった。

元来の刑事ドラマは、派手なアクションを売りにし、カーチェイスや銃撃のシーンも展開されるほど迫力と刺激に満ちていた。70~80年代は、各局がそれぞれ看板となる「刑事ドラマ」を持っており、現在では考えられないほどの予算をつぎ込んでいた。いわば刑事ドラマ黄金期とも言える時期だ。

そんな花盛りの刑事ドラマからしてみれば、特捜最前線はきわめて異色の作品であったと言えるだろう。刑事のマイナスイメージを前面に押し出し、かつ人情や悲惨な話が印象に強く残る脚本が多い。

また、10年という放送期間の中で作中の殉職者も意向によりわずか2名に留まっている。

中でも、高杉刑事の場合は、演じる西田敏行が売れっ子俳優となったことで他作品への出演も増え、登場回数が減ったことで降板となるも、それが殉職という幕引きではなく「転勤」という形をとったことも印象的なものであった。現に、のちに高杉刑事はゲスト出演という形で再登場も果たしている。

アクションを売りにせず、銃撃もほとんど無い、言うなればガチンコのストーリー勝負の作品であったと言えるかもしれない。ただ、やはり現在からしても「無茶」に思える演出は見て取れる。

85年から使用されていた「最終バージョン」のオープニングでは、叶刑事(夏夕介)が荒れ地をバックに自動車のボンネットを飛び越えると、その背後で大爆発が起こるというわずか数秒のムービーが流れる。当時の事情を考えれば、もちろんCGなどではない実際の爆破となっているだろうが、本編ではなくOPのわずかなシーンのために撮影したと考えると、やはり今では考えられない演出だ。

また、この最終バージョンOPではもう一人過激な演出がなされている。それは桜井警部補(藤岡弘)のシーンなのだが、彼は港のシーンで突如上着を脱ぎ捨てて、そのまま海の中へ飛び込んでいく。これも、アシスタントなどではなく本人が実際に海へ飛び込んでいるものなのだが、あまりにシチュエーションが不明かつインパクトの強いシーンとなっている。

なお、本編ではたびたびこの桜井がヘリコプターを操縦しているシーンがあるが、桜井を演じた藤岡は実際にヘリコプターを操縦する免許を所持。『大都会』や『西部警察』などヘリコプターを飛ばした刑事ドラマは数あれど、最も多く飛ばした刑事ドラマは本作であったと言われている。

ヒューマンドラマを描きながらも、このような強いアクションの印象を残すその要因の一つには、刑事役の出演者に特撮ドラマ出演経験者がしばしば見られたというのもあるかもしれない。

先の夏夕介は『宇宙鉄人キョーダイン』に主演、藤岡弘も『仮面ライダー』にてライダー1号を務め、そのほか、『秘密戦隊ゴレンジャー』に主演した誠直也といった顔ぶれなどが見られる。このため、当時からタイトルを「”特撮”最前線」などとイジられることも多かったようだ。

【参考記事・文献】
http://tokusousaizensen.web.fc2.com/gaiyou.html
https://x.gd/t9eC7
https://dic.pixiv.net/a/%E7%89%B9%E6%8D%9C%E6%9C%80%E5%89%8D%E7%B7%9A
https://kumafumo.com/reckless
https://ameblo.jp/mykeloz-kimagure/entry-12871604361.html

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【文 黒蠍けいすけ】

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