呪い

【山口敏太郎の呪物コレクション】松ヶ枝関之助の大鼠退治

【大鼠退治】

大鼠を退治している松ヶ枝関之助の錦絵。

【松ヶ枝関之助賊鼠退治図】

大元は、一魁斎芳年(いっかいさいよしとし=月岡芳年)の「松ヶ枝関之助賊鼠退治図」で、『美勇水滸伝』と呼ばれる51枚に及ぶ錦絵集の中の一つである。

松ヶ枝関之助という人物については不明だが、伊達騒動(江戸時代前期に起こった伊達家のお家騒動)を描いた人形浄瑠璃・歌舞伎の演目である『伽羅先代萩』(めいぼくせんだいはぎ)の中に、床下で巻物をくわえた大鼠を一太刀にした(または鉄扇で打った)松ヶ枝節之助という忠臣が登場している。

大鼠の正体は仁木弾正という人物で、正体を現し巻物を懐にしまうと不敵な笑みを浮かべて去っていく悪党として描かれる。

歌川国貞の浮世絵にも「仁木弾正」と共に「松ヶ枝的之助」と記された人物のワンシーンを描いたものがあることから、松ヶ枝関之助はいわばこれらと同一の登場人物を表しており、大鼠退治は当該の演目に由来する物語だと思われる。

(写真:山口敏太郎事務所)