東郷平八郎は、明治・大正期の海軍軍人。日露戦争にてロシアのバルチック艦隊を破った提督として称えられ、その生前の発言は日本海軍に大きな影響を及ぼしたとも言われている。
死去の際には国葬が執行され、また神格化された事情から東京都渋谷区をはじめとして数ヶ所の東郷神社が建立された。
薩摩藩士の息子として生まれた東郷は、1863年に初陣となる薩英戦争、その後の戊辰戦争では軍艦「春日」の乗員となって阿波沖海戦などに参加し、このことが彼の将来を海軍へと導いたきっかけになったとされる。
当初は戦争に心を痛めて鉄道技師を志したと言われているが、「日本が世界と渡り歩くためには海軍の存在が不可欠」という西郷隆盛の言葉を聞き、1871年、海軍軍人となるべくイギリスへと留学。
この留学において、商船学校で学んだ国際法はのちに大いに生かされ、1894年に日清戦争が勃発し「浪速」の艦長として参加した際、豊島沖海戦で清兵を乗せたイギリス商船を撃沈して英国側から非難を受けたものの、国際法に反する行為が無かったということで問題を沈静化させることに成功した。
1899年には佐世保鎮守府司令長官、1901年には舞鶴鎮守府司令長官といった要職に就き、1903年には連合艦隊及び第一艦隊司令長官に任命された。これを抜擢したのは海軍大臣の山本権兵衛であったが、当時は海軍内でも寡黙で地味な存在として認知されていた東郷の異例とも言える人事だった。この時、東郷の抜擢を疑問に思った明治天皇に、山本が「運がいい男ですから」と答えたという逸話が残っている。
日露戦争下の1904年10月、バルチック艦隊がバルト海より極東派遣され出航した。この時、およそ世界半周の長い航海を経て、1905年5月に日本近海へ到着した。艦隊は、一時ウラジオストクへ向かうことになったのだが、この時日本海軍は、バルチック艦隊が対馬海峡で迎え撃つ準備を進めていた。
この対馬への配置は半ば賭けであった。そうして迎えた5月27日、バルチック艦隊と連合艦隊の対戦は、翌28日にバルチック艦隊が壊滅、一方の連合艦隊は被害が軽微のうちに集結し、史上稀に見る一方的勝利となった。
因みに、当初この会戦では敵艦へあらかじめ損害を与えてから決戦に臨もうとする「連携機雷」の計画がなされていたが、波が高すぎて機雷を敷設する小型艦艇が出撃できず、作戦を諦めざるを得なかった。この悲痛な思いで大本営へ伝えた電報が、「本日天気晴朗なれども浪高し」であった。
ともあれ、有色人種であった日本が大国ロシアを破ったことは、当時のロシアの圧政に苦しむ国々に希望を与え、その中でもオスマン帝国では「トーゴー」と名付けられた子もいたという。
また、連合艦隊の解散時には、「勝って兜の緒を締めよ」と兵士たちに訓示し、バルチック艦隊の司令長官への見舞いにも足を運んだことから高潔な人物としても評価され、イギリスは英国海軍の伝説的提督であるホレーショ・ネルソンに因み、東郷を「東洋のネルソン」と称して讃えたという。
それ以来、東郷の発言力は絶大な影響力を持つものとなるが、逆にこれが日本海軍を二分する因子にもなった。1903年のロンドン軍縮会議において東郷は軍縮反対の立場を主張し、「協定がまとまらなければ条約を破棄せよ」とも述べたほどであった。結果的に条約は調印されるが、条約に賛成するか、艦隊に拘るかという分裂構図が海軍内で生じることとなった。
こうした晩節の行為は、彼自身の栄光をけがすものと捉えられることが多い。だが、少なくとも彼が海軍とならなければ、日本の日露戦争勝利はあり得なかったであろうことは確かだろう。
余談だが、彼にまつわる有名な話として、「肉ジャガ」の誕生は東郷平八郎がきっかけだったというものがある。
これは、かつてイギリスにいた頃に食べたビーフシチューを食べたいと料理長に命じた際、ビーフシチューを食べたことのない調理長が東郷から伝えられた具材を頼りに調理を行ない、結果としてビーフシチューではないものの非常に美味しい和風の何かを作り出してしまったという。この時、出来上がったのが肉ジャガだったという。
よく知られたエピソードの一つとなっているが、1990年代、肉ジャガ発祥の地を称する舞鶴が町興しのために創作された話であることが現在では判明している。
実際、当時はすでに日本でもビーフシチューはよく知られていた料理であり、料理長が知らなかったということ自体が疑わしいものであった。現在、肉ジャガ発祥論争は舞鶴と呉で展開されているが、どちらも東郷が赴任したことのある地となっている。
【参考記事・文献】
・https://rekishikaido.php.co.jp/detail/3932
・https://dic.nicovideo.jp/a/%E6%9D%B1%E9%83%B7%E5%B9%B3%E5%85%AB%E9%83%8E
・https://x.gd/GlELn
・https://colorfl.net/togoheihachiro-nikujyaga/#i-4
・https://activelife.blog/heihachiro-togo-2/#toc9
【アトラスニュース関連記事】
日露戦争で沈んだドンスコイ号に15兆円の金塊?詐欺容疑で逮捕!
バルチック艦隊を壊滅させた参謀「秋山真之」、予知夢で勝利に導いた?!
【アトラスラジオ関連動画】
【文 黒蠍けいすけ】
画像 ウィキペディアより引用