病的な嘘つき女子のお話をします。
私の月姫です。聞いたら本人が気づくかもなのでメールだけで。
そのビョーテキさんを仮に由佳子さんとします。4年ほど前知人から紹介されました。由佳子さんは知人の勤める大手企業で派遣社員として働いている自称30代の女性です。知人とは同じ部署で、同じkポップグループのファンであることから親しくなったそうです。
見た目も言葉遣いも特に変わったところはなかったのですが、派遣社員をしていることについて「本当は大学を卒業するときに大手都市銀に内定していたのを蹴って、あえて不安定な身分に自分を置いている」と話していました。
なんでも、そういうことができるのは若い時だけで、その経験を生かして次はフリーランスの仕事をやってみたいと言っていました。私は「今でもある意味フリーランスじゃないか」と思いましたが、言葉には出しませんでした。
その後知人と会ったとき由佳子さんは元気か聞いたところ、困ったような表情になり、様子を聞かせてくれました。なんでも、部署の誰かが「連休にディズニーに行った」という話をしたら、由佳子さんは「私はアメリカのディズニーが好き、あっちの方がだんぜんいい」と発言。
また別の女性が仲良し同士で「いま彼氏が今ヨーロッパに出張中なんだ」と言っているのを耳にしたら「自分の婚約者はMBA取得のため企業留学でハーバードに行っている」と参入したそうで。
知人は由佳子さんに婚約者がいたと初めて聞いて度肝を抜かれたと言っていました。また、職場でだれかの実家が医者だと話していると、由佳子さんは聞かれてもいないのに自分の家も医者、ただし両親とも医師と言っていた。もちろん初耳。しかも兄は反対を押し切って弁護士になったとか。
また、自分は幼稚舎からK大学付属だとか、幼稚舎に入るまでずっとお手伝いさんたちとだけ過ごしていたので初めて同世代の子どもたちを見て緊張した、とか。なんの確証も取れていないので嘘とも本当とも言わないけれど、由佳子さんの話の内容と切り出すタイミングが挑戦的で、社内であまりよろしくないムードを作っているとの事でした。
その次に知人と会った時、私はワクワクして由佳子さんのその後を聞きました。
しかし知人の返事は、あれからすぐにあっさり辞めてしまった、というのです。本当になんの前ぶれもなく。辞めた理由で強いて心あたりと言えば、と知人が話してくれたのは以下のような話です。
繁忙期、その企業では短期のアルバイト学生を投入するそうなのですが、ある日ロッカールームで知人も含め正社員派遣社員に混じってアルバイト女子学生グループがにぎやかに雑談をしていたというのです。
中心で話していたのは男性社員たちの間で一気にアイドル的存在となっていた美形女子でした。話題は今までやったアルバイトについて。
「あたしキャバ嬢やったことあるよ」
美形女子の発言に一般女子たちもキャーと反応します。「私もやったよ」「実は私も」という声もちらほらあがります。
『へー、みんななかなかやるなあ』と知人は聞いていたそうです。
「でさあ、キャバ嬢やってて、マネージャーからアルバイトしない?って言われたことない?」
「えー、なにそれ?」
「一晩パーティー出てくれたら30万払うけど、って言われたの」
「ええー、スゴーい」
「ああ、知ってる、すっごく綺麗な子がそういうの言われていたわ」
「◯ちゃん綺麗だからね」
そんな感じでロッカールーム女子トークが盛り上がっていた時です。
「私も100万の仕事、頼まれたわ」
そう言い放ったのは由佳子さんでした。
「私の場合、キャバクラじゃなくて会員制のクラブなんだけど。外国からの政治家とか投資家の接待ができるくら。英語とフランス語ができるっていうことでね、頼まれたわ」
一同、ぽかあーんです。その顔で? というキミマロは置いといて、突っ込みどころが満載すぎて一同身動きできない状態だったといいます。
その状態を破ったのは美形女子でした。
「そのバイト、結局売春だったんですよお、先輩がこっそり教えてくれたんで、私はもちろんことわったんですよお、違うんですかあ?」
由佳子さんは顔色一つ変えず、
「私のところはキャバクラとは違うから。パーティに出てハイクラスな話ができないとダメだけど、そういうお相手をする役だったわ。ドレスとか話題の準備のためにコーチの人についてもらって、その料金がとても高いんだけど、自分の教養にもなるから私はいつもお受けしているの」
知人は聞いていていたたまれなくなったと言いますが、由佳子さん本人は平気でそのまま派遣の仕事は続けていたそうです。
辞めたのはごく最近。理由はわからないそうですが、裏の取れている嘘(たとえばK大出身というのはある筋から明かに事実無根がバレている)に次ぐ嘘で身動きが出来なくなって、どれかつつかれる前に丸ごと引っ越したのではないか、というのが知人の見解でした。
私個人的には、由佳子さんという人は、病的な嘘つきというより、病的な負けず嫌いなのではないかという印象を受けました。深窓の令嬢路線で行ってたのがなんかのスイッチで夜の女を告白したのが怖かったです。
(アトラスラジオ・リスナー投稿 タマリン市原さん ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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