古代ギリシアの数学・物理学者であったアルキメデスは、「水を張った容器に物体を入れた時、あふれ出た水の量と物体の体積が等しい」という原理を入浴中にひらめいたり、戦争のさなか地面に計算や図形を描いて考えていたところ、ローマ兵が近づいた際に「わたしの図形を踏むな!」と怒鳴ったり、と数々の逸話が残されている。
彼は自分の持つ数学や物理学の知識を理論やイメージで終わらせることなく、次々と具現化させてきたことでも評価されており、それが彼を天才数学者たらしめる要因であると言えるだろう。
紀元前264年から紀元前146年にかけて、共和制ローマとカルタゴの間でおよそ120年に渡り3度の戦争が行なわれていた。地中海地域の覇権を巡るこのポエニ戦争において、特に第二次ポエニ戦争の際、アルキメデスの作り上げた軍事兵器が大いに活躍したと言われている。この時の兵器として知られているのは、「鉤爪」「投石機」そして「熱光線」と呼ばれるものである。
「鉤爪」はローマ艦隊を引き揚げて陸に打ち付け沈めてしまうというものであり、「投石機」はねじりバネを利用した強力な投石機として80キロもの石をも発射することができたという。また、「熱光線」は鉤爪も投石も届かないほどの遠方攻撃で使われたとされており、平面または凹面の鏡を集めて太陽光線を反射させ、それを軍艦に集中させて焼き尽くすというすさまじいものだ。
これら3つの兵器のうち、「鉤爪」と「投石機」については、古代の歴史家ポリュビオスの記述やプルタルコスの『英雄伝』でも詳しく述べられている。しかし実は、熱光線については極めて怪しい情報であると言われており、そもそもアルキメデスの死後300年も経ってから初めて触れられた兵器であったというのである。その中には、発言の信憑性が欠ける人物もいたため、長きに渡り実在の可能性が疑問視されていたのだ。
この鏡を使った熱光線兵器については、これまで何度か実験が行なわれており、近年では2015年に行なわれたマサチューセッツ工科大学の学生による実験が知られている。この実験では、約30センチメートルの四角い鏡を130枚ほど集め、30メートル離れた木製の船に太陽光を集めて当てるというものであった。実験前の学生のアンケートでは「不可能だ」という回答が95%もあったそうだが、その結果は「少なくとも不可能とは言い切れない」というものであったという。
熱光線は、「死の光線」「焼く鏡」などとも呼ばれ、軍艦を灰燼(かいじん)に帰したと説明されることが多い。実験によってその実在は、必ずしも否定されるものではないと言われているが、鉤爪や投石機に比べて鏡と太陽光しか使わないというのは、現代から見てもかなり特殊な方法であることに変わりはない。
もし本当に使用されていたのであれば、歴史書の記述にあるように敵軍が恐れおののいたような非常に強力な武器となっていたことは確かだろう。
【参考記事・文献】
上垣渉『アルキメデスの脅威の発想法』
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(ナオキ・コムロ 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
Photo credit: RG TLV on VisualHunt.com
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