錦野旦は、日本の歌手、俳優そしてタレントとして活躍する人物である。
1970年、アイドル歌手「にしきのあきら」として『もう恋なのか』でデビューを果たし、同年のレコード大賞最優秀新人賞を受賞し一躍スターダムにのし上がり、その後人気の低迷を経て90年代からはバラエティ番組にて「スターにしきの」と称され人気を博した。
1948年、大分県生まれであった彼であるが、出自は在日韓国人2世であり、1961年に家族ともども日本に帰化している。自身の出自については1972年に公表しているが、人気絶頂期であったということや、そのような出自を明らかにする有名人が当時非常に珍しかったこともあって大きな話題となった。
スター歌手としての人気をほしいままにした彼であるが、そんな彼の転落は1973年に始まった。
当時のマネージャーが錦野明名義で金額およそ1億円を横領、そのまま失踪してしまう出来事が発生し、その返済のために彼はドサ周りを余儀なくされてしまう。
その後も不遇の連鎖は続き、1976年にはデビュー以来連続出場していた紅白歌合戦に落選、1978年には、大麻取締法違反の容疑で逮捕された。
これは、当時映画で共演したとある女優が大麻常習犯であり、その女優が逮捕された際に錦野から大麻の用意を要求されたという嘘の供述をしたことで、彼の自宅が家宅捜索されてしまうに至った。この時、映画で使用するために用意された精巧なモデルガンが発見されたことで、銃刀法違反も加わることとなってしまった。
結果として起訴猶予処分とはなったものの、その後、知人の紹介で「トンガオイル」というものを売り出そうとしたところ薬事法違反で頓挫してしまい、さらには児製の実業家に騙されて借金を増やした上に財産の差し押さえも受けてしまった。
これらの事件は、すぐに相手を信用してしまうという彼の”お人よし”が災いして起こったとの意見もある。またこの時期に彼は前妻である武原英子と出会い結婚をしている。芸能人同士と言えば大規模で派手な挙式が行なわれることが強くイメージされていた中、上記の事情もあってか二人の挙式は非常に質素なものであったと言われている。
1990年代、どん底と言ってもおかしくなく、すでに40歳という年齢を超えていた錦野であるが、そんな彼の運命を一変させる出来事が起こった。
それが、バラエティ番組『とんねるずの生でダラダラいかせて！！』(通称「生ダラ」)からのオファーであった。
きっかけは、「スターの華麗な乗馬を見せて欲しい」というオファーであった。現場へ行くとそこには両足がつくほどの大きさのポニーがおり、飛び降りる際鐙(あぶみ)に足が引っ掛かってしまい、頭から落ちてしまった。ここから、彼にとっての「バラエティー」は始まったという。
その後、「スターにしきの」という愛称によってドッキリなどに引っかかる彼の姿がこの番組では一つの名物となっていった。
中でも特に伝説として語られているのは、「スターにしきのビックリ大作戦！！」と銘打った”温泉ボウリング”である。これは、彼が露天風呂に誘い込まれ、湯船で一息ついたその直後に露天風呂の底が開き、ウォータースライダー状態で大きなサイズの並んだボウリングピンを倒すというものであった。
「ナイスカン！」「パーフェクト！」と称賛を送るキャストたちをよそに呆然とする錦野が印象的であったが、数ある彼へのドッキリの中でも最高のものとの呼び声も高いものとなったのは事実だ。
その後も、番組内で彼はマラソン後のゴール直前で落とし穴に落とされたり、スケート勝負にて「とにかく(勝ち負けより)転ばないように滑るということだけなんだよね」と語るもスタート直後に転倒するなど、”スター”という称号をネタにした扱われ方をされることが多かった。
しかし、彼がこの番組での活躍をきっかけとして俳優活動や人気の再燃を果たし、どん底の芸能生活から救われたというのは本人も語っているところとなっている。現在でも、とんねるずからの連想で錦野をイメージする人が多いと言われているほどに、この番組が錦野にもたらした影響は非常に大きかったようだ。
【参考記事・文献】
・https://hochi.news/articles/20180128-OHT1T50157.html?page=1
・https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geinox/145848
・https://x.gd/dLpeS
・https://sirabee.com/2018/01/29/20161478880/
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【文 ナオキ・コムロ】
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