高木ブーは、ザ・ドリフターズのメンバーの一人であり、現在はウクレレ奏者として活動を続けている人物である。かつてのメンバー5人の中ではリーダーのいかりや長介に次ぐ年長者、現存するメンバーでは最年長となっており、2023年に90歳を迎えた。
ハナ肇とクレージーキャッツの後輩であり、高木ブーという芸名は、「肥満体型」を表すものとしてハナ肇によって名付けられたという。ドリフのコントでは、基本的にメンバー勢揃いのコントで挨拶がなされて以降は基本的に目立ったアクションもセリフもなく、「ただいるだけのデブ」といったイメージを視聴者にもたらした。
そのことは非常に多くの彼らのコントの中でもネタにされ、特に志村けんからは、何らかの拍子でセリフめいたことを発言すると「喋ったぞ!」と言われ、また反抗できない流れなのをいいことに竹刀などで叩かれるなど、いじられキャラのような存在でもあった。
しかし、『8時だョ!全員集合』の終了後に『ドリフ大爆笑』となってからは、高木がメインとなる定番コントが出現し、彼の代名詞ともなった「長介・工事・ブー おなじみ雷様」は特に有名である。元々、高木にセリフなどが無かったのは彼が殆ど覚えようとしなかったことが原因で、徐々にセリフが短くされていった末にとうとう無くなってしまったのだと言われている。
しかし、雷様では台本が無い代わりに「(いかりやに対し)あんたが給料払わないからじゃん」など、言いたい放題の役回りが人気となり、思わず共演のいかりやと仲本も笑い出してしまうほどであった。また、雷様の派生コーナーとされる「ご存知、三人ジイさん」では、大声を張り上げるようなテンションの高い高木のジイさん役が見ものとなっていた。
ただ、メインのコーナーがあったとしても、やはり5人揃ったコントなどの中では無能者としてのイメージが非常に強かったこともまた事実であり、そのことが原因でとある楽曲が産声をあげた。それこそが、筋肉少女帯の「高木ブー伝説」である。1987年に発売されたこの楽曲は、彼らのデビュー間もない頃の作品であり、「俺は高木ブーだ!」を連呼し、失恋男性を「まるで高木ブーのようじゃないか」と揶揄する内容となっている。
この曲が発表されたところ、ドリフの所属事務所より苦情が寄せられてしまい、自主回収ということになってしまった。この時のものは、のちにイタズラであることが判明したものの、メジャー・デビューとなった際に再収録したところ、今度は本当に事務所からクレームが寄せられたことでお蔵入りとなってしまった。
ところが、1989年にこの一件を聞きつけた高木本人によって「若いヤツらが、頑張ってバカやってるんだから許してやろうよ」ということで、公認されるに至った。大槻ケンヂは、「今の自分がいるのは高木さんのおかげ」と感謝しているほどだという。因みに、再収録音源はのちにアルバム収録されており、最初のものを「元祖高木ブー伝説」と銘打ち、「高木ブー大伝説」というタイトルになっている。
彼の優しさが垣間見える逸話であるが、その若い頃はどちらかというと短気な性格であり、しょっちゅういかりやと喧嘩をしていたそうだ。しかし、一方ではいかりやが唯一頼りにしていた人物が高木だったのではないかとも言われている。
「全員集合」時代のこと、収録が終わると、その当時独り身だった仲本、加藤、志村が夜の街へ遊びに出てしまう中、所帯持ちであったいかりやと高木だけが、共に居酒屋へ赴いていたということが多かったという。
高木によると、基本いかりやはあまり喋らないが、他のメンバーなどの愚痴などをこぼしたのは高木だけであったという。このことは、メンバーの中では年齢も3つ違いで最も近かったことからの信頼もあったのだろう。いかりやが亡くなった際は、彼の遺体を前に「バカヤロウ!」と叫んでしまったとの逸話もあり、それだけ強固な間柄であったことがわかる。
リーダーの悩みを聞き、それを黙って聞くという形で支えていた高木ブーは、実はドリフの影のリーダーであったのかもしれない。
【参考記事・文献】
・https://cat303.com/blog/11596/
・https://hochi.news/articles/20221209-OHT1T51181.html?page=1
・https://asuneta.com/archives/66248#toc2
・https://bunshun.jp/articles/-/10194
・https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/338552#goog_rewarded
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【文 ナオキ・コムロ】