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『あぶない刑事』が人気作になったのは「柴田恭兵」アドリブ演技のおかげだった

柴田恭兵は、主に刑事ドラマで活躍する俳優である。舘ひろしが名付けた「恭サマ」の愛称で知られ、80年代後半に放送された『あぶない刑事』は、舘ひろしとのダブル主演として人気を博し、2024年5月には通算8作目となる『帰ってきたあぶないデカ』が公開された。

若い頃の柴田は、あまりにも「あぶない刑事」が人気となり名前が大きくなりすぎたため、その印象ばかりが際立つようになったことに不満を感じていた時期もあったという。しかし、他の作品をやってから再び「あぶない刑事」の撮影現場にくると、不思議と実家のような安心感を抱くことにも気付いたという。

同じく主演の舘ひろしをして、「あぶない刑事のフォーマットは恭サマが作った」と言わしめたほどだ。ただし、舘ひろしによれば、当初彼は柴田との芝居に苦手意識があったらしい・・・

「あぶない刑事」における柴田の特徴は、なんと言ってもアドリブ演技の存在だ。本作が放送されていた時代、役者とは台本通りにセリフを読むべきであり、アドリブはほぼ受け入れられていなかった。舘は、柴田のアドリブの連発に「変わった芝居をする人だ」と思い「いやだなあ」とも感じていたという。

だが、のちに舘はそれが柴田に対する羨ましさ・嫉妬の感情であったと回想しており、逆にそうした空気作りによって助けられたことも多かったという。一方の柴田も、舘から「ちょっと笑いに寄せすぎて格好悪い」と言われたことがあり、当時そこまで正直に意見してくれた俳優がいなかったこともあって、強く信頼するようになったとのこと。

この名コンビぶりが、まさしく「あぶない刑事」を今日に至るまで伝説の作品にのし上げた大きな原動力になったことは間違いない。

因みに、本作の撮影において最初期のアドリブは、2人が一緒に店でラーメンを食べている最中、柴田が舘に「タカ(舘の役名)、ナルトちょうだい」と声をかけたものであるという。

台本に無いやりとりがくるとは思わなかった舘は、戸惑いながら一言だけ返事を返すだけで終わってしまった。また、作中で柴田が「人生アドリブよ。顔も身体も心も全てアドリブよ」と言うセリフを発していたが、このセリフ自体もアドリブであったようだ。

この柴田のアドリブ癖は「あぶない刑事」でも健在であり、2016年公開ののドラマ『ヒポクラテスの誓い』の主演である北川景子によれば、共演者である柴田のアドリブに「耳を疑った」と称したほどであるという。

このことは本作の完成披露試写会で語られたエピソードで、特に緊迫したシーンに限って柴田が冗談を挟んできたのだというが、柴田本人はこれに対して「全く記憶にありません」とすっとぼけた。

一方で、そうしたおちゃらけたようなイメージとは打って変わり、非常にその対応の格好良さを象徴するようなエピソードもある。

かつてドラマで共演していた生田斗真は、柴田の好意で何度も撮影後に車で駅まで送ってもらっていたという。ある時、疲れからか車の中で眠りこけてしまい、その際手に持っていた缶ビールからビールがこぼれており、シートにシミが残ってしまった。

この時、すぐに打ち明けられずに終わってしまったのだが、1週間後また誘いを受けて柴田の車に乗り込むと、なんとシートはクリーニングされてシミは跡形も無かった。

これ以降、謝罪する機会を逃してしまったままであるということを、バラエティー番組内で打ち明けたが、番組側が柴田から預かった手紙には、「斗真は夢を見ていた。勘違いです。こぼしたのは僕です」と記されており、あまりの神対応に他の演者たちは驚きの声を上げ、生田も言葉に詰まる様子であった。

【参考記事・文献】
北川景子、柴田恭兵のアドリブに「耳を疑った」
https://www.crank-in.net/news/45666/1
舘ひろし、『あぶない刑事』は柴田恭兵への嫉妬から始まった
https://goetheweb.jp/person/article/20240523-abudeka-01?heading=2
「こんなにかっこいいんだ」舘ひろしを変えた38年前の鮮烈なアドリブ『西部警察』から『あぶない刑事』の世界へ引き込んだ柴田恭兵の軽くてオシャレなお芝居
https://futabasha-change.com/articles/-/914?page=1

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【文 ZENMAI】

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