ゲームセンターあらしは、1978年から83年まで月刊コロコロコミックにて連載されていた、すやがみつる作の漫画作品。
主人公石野あらしが必殺技を駆使して数々の強敵とゲームで勝負を繰り広げるストーリーであり、徐々にそのスケールが拡大し、世界征服を狙う組織との対決などに発展していった展開も繰り広げられる。この様式は、その後のコロコロ本紙におけるホビー漫画では定番のものともなり、その礎を築いた作品としての地位を獲得。
本作で扱われるゲームは、インベーダーゲームをはじめとしたアーケードゲームがメインとなっている。その中で、あらしが対戦で見せる「月面宙返り」(ムーンサルト)といった豪快なアクションから繰り出される必殺技は、あらし以前にすがやが執筆していた『仮面ライダー』のコミカライズによって培われた描写であったという。
そもそもは、すがやの描く主人公がどれも大人しいキャラだったため、「仮面ライダーやキカイダーのように飛んだり跳ねたりして欲しい」という編集部の要望があっての実現であった。
また、あらしは特徴的な出っ歯を持つなどだいぶ個性的なデザインとなっているが、本来イケメンとして描こうとしていたところ、担当編集者から「子供が感情移入しやすくするため不細工にしてほしい」と頼まれたことで、あの顔になったそうだ。
因みに、タイトルで「ゲームセンター」と銘打っているが、屋外イベントなどでの対決が中心として描かれるため、実は作中ほとんどあらしはゲームセンターに足を運んでいない。これは、インベーダーゲームのブームの中で、偽硬貨が使用されたり、恐喝などの不良の温床にもなっていた、当時の実際のゲームセンター事情を表していると言われている。
「炎のコマ」「エレクトリックサンダー」そしてあらしの母が繰り出した「ノーブラボイン打ち」など、次々と生み出されていく必殺技は見所である。相当にぶっ飛んだものもあり、歯の神経で出っ歯をリモートコントロールするという「出っ歯神経リモコン」なるものまである。
余談であるが、先の「月面宙返り」(ムーンサルト)に関しては、当時掲載されていた際のフキダシでの表記が、送り仮名の「り」を除いた「月面宙返」の部分にムーンサルトのルビが振られていた。その影響で、当時の子供たちの間では「ムーンサルト」ではなく「ムーンサルトり」という呼び名が広まってしまったという逸話もある。
本誌では看板漫画の地位にまで登り詰めた「あらし」だが、1982年にアニメ化されるものの、そこで人気をさらに伸ばす結果には至らなかった。大きな要因はもともとスペースインベーダーがメインであったという内容が、この時すでに時代遅れであったということや、この時期は曜日を問わず同じ時間帯にアニメが乱立していたという事情も影響していたようだ。
結果的に、1年の放映を予定していたアニメ「あらし」は半年で終了することとなり、作者自身「あらしはアニメ化で死んだ」という認識を持っていたという。
ところで、あらしがアニメ化になったことでコロコロコミックから消え去った作品がある。
室山まゆみの代表作『あさりちゃん』だ。あさりちゃんは当時、コロコロコミックでも連載されており、少女向けにとどまらないドタバタのギャグを展開する漫画作品として人気となり、1982年にテレビアニメが開始された。ところが、そのアニメ「あさりちゃん」の裏番組に回ったのが「ゲームセンターあらし」だった。
テレビ業界では、出演タレントや俳優、声優などが同じ時間帯にチャンネルでかぶってはいけないという暗黙のルールが古くから存在していたが、アニメやドラマにおいて同じ雑誌や出版社の作品で裏かぶりすることは、そこまで制限されている状態ではなかった。
実際、この少し前の時期の同じ時間帯には、日本テレビで『あしたのジョー2』、フジテレビで『釣りキチ三平』、テレビ朝日で『タイガーマスク二世』が放送されており、講談社三つ巴の状態であった。
だが、静観していた講談社と異なり小学館はこの同紙連載作品の裏かぶりを重く見たのか、なんとあさりちゃんのコロコロ連載を終了する措置に至った。相手が看板作品であったことが災いしての事態であったが、あらしが不振により半年で終了してしまった一方で、あさりちゃんは一年のアニメ放映を持たせることができた。これにより、ある意味でリベンジは果たせたのではないかとも言われている。
ゲームでの勝負というのが、実際的には見知った友人のみでの話として完結することが当然であった時代、そこから年月を経て現在では、eスポーツという形でゲームが競技として世界的に人気を博している。ゲームセンターあらしは、ある意味でeスポーツの先駆けともいえる先見性を持っていたのではないかとの評価もあるようだ。
【参考記事・文献】
アニメ化40周年の『あさりちゃん』は逸話だらけ 視聴率争いを制し、ギネス記録も…
https://magmix.jp/post/76538
ゲームセンターあらし
https://x.gd/foPmk
「ゲームセンターあらし」に学ぶ、昭和レトロゲームの世界(前編)
https://ablackleaf.com/archives/gamecenterarashi01.html
ゲームセンターあらし
https://x.gd/bvfd0
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【文 ナオキ・コムロ】
画像『ゲームセンターあらし(1) (てんとう虫コミックス)』