事件

裸の人間をバリケードに?!昭和を震撼させた「三菱銀行人質事件」の残忍

三菱銀行人質事件、通称梅川事件は、1979年1月26日に大阪府大阪市住吉区内の三菱銀行で発生した事件。

犯人の梅川昭美(うめかわあきよし:当時30)が、猟銃を持って北畠支店に押し入って現金5000万円を要求、職員・客40人を人質に42時間あまり立て籠もり、乱射によって死者も出した凶悪事件。

最後は、警察官によって射殺されたことで犯人が死亡し事件は幕を下ろした。

人質に死者が出たということでは国内の人質事件では初のケースとなり、また射殺での犯人死亡という例で言えば国内3例目かつ2023年までで最後のものとなっている。戦後の昭和犯罪史の中でも重大な事件の一つとして知られている。

この日の午後2時半ごろ、梅川は閉店間際の北畠支店に黒いチロル帽、黒いスーツ、黒のサングラス、白マスクという出で立ちで入店、手に持った猟銃で天井に向かって2発発砲し現金を要求。この時、非常電話で通報しようとした行員が一人猟銃の犠牲となり、この時に隙を見て逃げ延びた客の通報によって事件発覚。

その後到着した警察のうち2名の警察官が行内に入ったところ1人が梅川が射殺、ついには6署に車両168台、人員720人という大規模な現場の包囲がされた。約3日間に渡る異常事態はテレビ中継さえも行われた。

「史上稀に見る異常な犯罪」などと言われているこの事件の際立った点は、犯人の梅川が籠城中に行なった残忍な言動にあった。支店長をも射殺した梅川は、男性行員を上半身裸、女性行員を全裸にさせた。支店長席を陣取ってその机に3名の女性を座らせ、さらにその周囲にもう3名の女性行員を立たせるという人間バリケード、通称「肉の壁」を作り上げた。

また、金の在処などの問いかけに曖昧な返事をした行員に腹を立て発砲、重傷を負って倒れ込んだ行員に対して別の男性行員に折り畳みナイフを渡し「とどめを刺せ」と命令した。渡された行員は、「もう死んでます」と機転を利かせたが、なんと梅川は「それなら耳を切れ」と命じ、男性行員は「すまん」と言いながら左耳を切り落とした。耳を切られた行員は、のちに「声を出したら同僚も殺されると思い必死でこらえた」「よく思い切ってくれた、おかげで助かった」と回想している。

こうした梅川の猟奇的な残虐行為は、のちに週刊誌などでセンセーショナルに報道され、世に知れ渡ることとなった。また、見張り役の女性行員が、「警官隊がいる」と梅川にとって”有利”な情報を伝えるなど、極限状態において加害者と被害者に連帯が生じる「ストックホルム症候群」についても話題になった。

前述したように、事件は犯人が射殺されたことで一応の解決となった。しかし、事件は単純な残虐な「強盗」事件と片付けられない面がある。

強盗に入るということは金銭が目的であることは確かであり、梅川もそれを要求。しかし、事態は当初の目的とは別の方向へと転化していき、支配下に置いた人質たちに命令をしていたぶるという言動へとシフトしていった。このため、犯人が「動機不明」として捉えられている節もあり、この意味では「未解決事件」と扱われることもある。

梅川は、この事件を起こす以前の15歳のころにも広島県で「大竹市強盗殺人事件」を起こしたことがあった。

当時、不良として知られていた梅川が遊ぶ金欲しさに強盗を思い付き、一時期アルバイトをしていた建設会社の社長宅に押し入って留守をしていた社長親族を殺害、現金や通帳を持って逃亡した。その遺体は、刺し痕のほかに何発もの殴打も見られるほど残忍な状態であった。少年院退院後も非行を続けた梅川は多額の借金を抱えた末にくだんの事件を画策。

高度成長から見放された貧困の中で世への不満を爆発させた人物との評もある。「人を信用せず」常に「周りは敵だらけ」と気の毒なほどに張り詰めていた、とは近所での評である。一方で、自宅からは思想書をはじめ経営学やハードボイルド小説など数百冊の蔵書があるほどの読書家で、さらに記憶力にも優れ、人質たちの顔と名前も全て覚えたほどであったという。

犯人の背後を探ろうとも、そこまで単純な動機が描けない不可解さ、それがこの事件を怪事件たらしめるものとなっている最大の要因なのだろう。

【参考記事・文献】
『昭和平成「怪事件の真相」47』

繰り返された殺人…有名銀行強盗事件の少年時代の犯罪【衝撃の未成年事件簿】
https://news.nicovideo.jp/watch/nw8091450
「三菱銀行人質事件」~1979 世間を震撼させた昭和の猟奇立てこもり事件!
https://x.gd/xUVyg

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【文 黒蠍けいすけ】

画像 ウィキペディアより引用