1995年7月30日夜間、八王子のスーパー「ナンペイ」に勤めるパート従業員の女性と待ち合わせをしていた知人男性が同乗者と共にスーパーの駐車場に到着した。しかし、いくら待っても店舗から出てこない女性を不審に思った男性が、2人でスーパー2階にある事務所へ行ってみると、そこにはパート従業員の女性とアルバイトの女子高生2人、計3人が死亡しているのを発見した。
世に言う「八王子スーパー強盗殺人事件」である。
アルバイトの2人は背中合わせの状態で粘着テープで手や口をふさがれており、いずれも頭部に1発ずつ銃弾が撃ち込まれていた。一方のパート女性はよりひどいもので、腹部に刺し傷があり2発も撃たれていた。
事件当日は近所で盆踊り大会が開催されていたこともあり、祭りの音や花火の音で銃声が気づかれにくかったようであるが、証言によれば計5発ほどの発砲があったとされ、うちの1発は金庫に残っていた銃弾の痕であると思われる。
数少ないながら各証言をもとにすると、犯行時間はなんと3分程度。また不可解なことに事務所内が物色された形跡が殆ど見られず、店長の机に置かれていた貴金類には手つかずで、そばには金庫の暗証番号のメモがあったにも関わらず金庫の中身は一切奪われていなかった。
相手を至近距離から躊躇なく銃撃できる犯人とは一体何者であったのか。捜査の中でいくつか判明したことがある。2000年に入り、事件発生直後に現場近くで不法滞在していたフィリピン人が国外脱出していたというのだが、この調査による成果は得られなかった。また、覚醒剤密輸により中国で死刑が確定していた日本人の元暴力団員が、この事件に関与していたと供述していたことが公安当局から知らされたが、取り調べを重ねるごとに供述が二転三転したことで、信憑性が低いと判断された。
現在最も有力視されているのは、特に暴行の痕跡がひどかった被害者のパート女性である。彼女は同月にスーパーへ勤め始めたが、それより以前は水商売をしていたという。男性とのトラブルが大変に多かったようで、時には刃物を送り付けられるなどの脅迫を受けていたというのである。そのため、この事件は強盗に見せかけた怨恨による事件であり、女子高生たちは巻き込まれたに過ぎなかったのではないかと考えられている。
また、現場からは犯人と思しき指紋が検出されていた。2015年にはなんと、当時多摩地域に住んでいた男性が犯人だと特定されたという報道もなされた。現場近くで目撃されていた白い乗用車と、類似した車を所有していたことから真犯人と目された。
しかし、事件当時にアリバイがあり、DNA鑑定の結果不一致が確認されたこと、何より報道された時点で既に病死していたこともあり、真犯人という決定打には至らなかった。
当時のスーパーの専務兼店長であった人物が、警察から事件の一報を受けた際に、「そんなバカな。3人とも殺されるわけがない」という発言としていたという。この人物はかなり高価なブランド品などを好んでおり、時には暴力団関係者と思われる人物を事務所に招き入れるほどに派手な交友関係を有していたという。
結果的に、犯行とは無関係であると判断されたようではあるが、事件前に何らかの事情を知っていたのではないかとも考えられる。
この事件は犯人の目的が不明であることから犯人の絞り込みが難航していた。同年に地下鉄サリン事件や国松長官銃撃事件が立て続いていたこともあり、捜査員があまりにも不足していたことも災いした。土地勘のない捜査員が応援に駆り出され、未了未決の資料で溢れていたという。
犯人は、このように捜査が思うように進まないことまで見越して犯行に及んだのだろうか。事件は今も迷宮入りのままである。
【参考記事・文献】
犯罪事件研究倶楽部『平成日本凶悪犯罪大全』
別冊宝島編集部『昭和平成「未解決事件」100』
文春ムック『昭和平成「怪事件の真相」47』
八王子スーパーナンペイ事件の犯人や実名!稲垣則子や店長の今現在や中村稔とは?
https://recommendnews.com/2018/08/13/hachiojisupananpeijiken-hannin/
(黒蠍けいすけ 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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