たい焼きといえば、冬の定番菓子として知らない人はいないだろう。だが、そのたい焼きのルーツが韓国であるという主張が存在しているらしい。
その名は「プンオパン」。
韓国でポピュラーな冬の屋台販売の人気菓子であり、フナ(プンオ)の形をした生地(パン：米粉や卵が使用されたもの)の中に小豆餡が入っているのが基本であり、韓国のデパ地下やショッピングモールでは常に行列ができるほど安価(1～5個で50～100円)かつ美味なフードとなっている。
いわば、タイ焼きならぬフナ焼きといったところだろう(なぜフナであるかはよくわかっていない)。
たい焼き韓国起源説で言われているのは、ずばりこのプンオパンであるという。すでにお解りのことと思われるが、生地の中に餡が入っていること、そしてタイとフナの違いはあれども魚の形をしていること、という共通点が見られる。
では、実際のところどうなのだろうか。
そもそもたい焼きは、大阪生まれの神戸清次郎という人物が考案した菓子であると言われている。東京で店を開いた彼は、当初今川焼を販売していたが評判はあまり良いものでは無かった。売り上げに悩んでいた彼がそこで発案したのは、「めでたい」にあやかって鯛の形をした今川焼を作れないかというアイデアだったようだ。
今川焼のレシピは変わらず鯛の形で焼き上げるというこの「たい焼き」は、見事に大成功をおさめ、庶民のおやつとして定着していくこととなった。
このたい焼きが、のちに朝鮮半島へ渡ることとなった。そのきっかけは、1930年代の日本統治時代のことである。食糧難であった戦時下に日本から半島へ渡ったたい焼きは、当初「プルパン」という名称で呼ばれており、安価で食べやすいということから瞬く間に広まっていった。
その後は、韓国の経済成長に伴い一時期は見られなくなったが、90年代になって「プンオパン」として復活して現在に至る。
この経過を見てもお解りの通り、プンオパンの元になったのはプルパンであり、プルパンは半島に渡ったたい焼きそのものであり、そのたい焼きを考案したのは大阪生まれの菓子屋である。もっと遡れは、たい焼きは今川焼きを元にしたことからたい焼きのルーツは今川焼きと言ってもおかしくはないだろう。魚の形という面ですら、たい焼きが元祖なのだ。
実際のところ、この「韓国のプンオパンがたい焼きの起源」と主張する声は、他の韓国起源説に比べてそれほど大きいものではなく、現時点ではYouTubeのショート動画(「たい焼きが日本発祥と知った韓国の反応」と言ったようなもの)でいくつか見受けられるような程度である。
因みに、現地韓国ではフンオパンが再び広まってからのち「インオパン」すなわち「コイ焼き」も存在している。生地の食感などに差はあるようだが、フンオパンとインオパンの違いについては現地の韓国人ですらそこまで区別をつけているわけではないようであり、紙面でネタ記事が刷られたこともあったという。
気を付けていただきたいのは、逆に短絡的に「韓国のプンオパンが日本のたい焼きのパクリ」といった主張をするのは良くないということだ。日本から海を渡り持ち込まれて、そして人気を博して広まったことには変わりなく、そういったものを元にしてアレンジがなされるという点では万国変わりはない。
とはいえ、食べ物に関してだけでも韓国起源と主張された前例は少なくないというのも現状として事実である。万一後年には大々的にたい焼き韓国起源説が主張されることが無いとも限らない。
日本側の立場として、たい焼きとプンオパンの成り立ちと敬意をある程度知っておくことは必要であるかもしれない。
【参考記事・文献】
［日本では鯛焼きですが･･･］ 韓国の鮒焼き(プンオパン)と鯉焼き(インオパン)の違い
https://blog.goo.ne.jp/dalpaengi/e/8585b52874d7c9918a1abc8fcf4ca6ad
韓国の「たい焼き」プンオパン（フナ焼き）ってどんなもの？日本との違いや人気の理由を解説
https://39mag.benesse.ne.jp/lifestyle/content/?id=150459#:~:text=%E3%83%97%E3%83%B3%E3%82%AA%E3%83%91%E3%83%B3%E3%81%AE
たい焼きの由来・歴史や特徴
https://wagashimiryoku.com/wagashi/taiyaki/#index_id0
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【文 黒蠍けいすけ】
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