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動物声帯模写の名跡「江戸屋猫八」が演じた鳴き声は動物だけではなかった

演芸において、動物の声帯模写・物真似といえば江戸家猫八を置いて他にはない。

江戸家猫八というのは、動物の声帯模写物真似師の名跡であり、現在活動しているのは五代目である。二代目を除いては全て岡田家がその名を継いでおり、テレビ出演などを通じて三代目・四代目から広くその名が知られるようになった。猫八という名は、8種類の猫の鳴き真似をした江戸時代の物乞いの呼び名に由来すると言われている。

江戸家猫八といえば、思い起こされるのはニワトリやカエルといったものはもちろんのこと、コオロギやスズムシといった秋の昆虫、そして最も有名なのは小指を口に咥えて行なうウグイスだろう。

三代目は、60年以上に渡りその名で活動していたことから印象が強い人も多いかもしれない。とはいえ、三代目は特に話術を絡めて行なう面が大きく、四代目によればレパートリーも20程度であったという。時折、客席からリクエストされることがあり、意地悪な客から「ゴキブリ」というお題を出され、「ホイホイ」と切り出し、「カバ」を頼まれた際は「カバー!」と”鳴いて”客席を笑わせていたという。

四代目は父である三代目に伴い40年以上も「江戸家小猫」を名乗り、2009年に猫八を襲名した。だが、四代目の研究ぶりはつとに知られており、鳴き声の研究をするために動物園をよく訪れ、特に野鳥の鳴き声に強く力を入れたことから、日本各地をはじめとして東南アジアにまで赴いていたほどであったと言われている。

そのレパートリーは100を超えるほどにもなったそうだ。その精神は、息子である五代目にも息づき、五代目はアルパカやヌーなどあまり鳴き声に馴染みのない動物の鳴き真似をするということでさらなる境地の開拓を行なっているようだ。

そんな真面目な性格であると同時にユーモアやサービス精神もあった四代目が、小猫であった時期に次のようなエピソードがある。

2000年代の深夜番組『北野タレント名鑑』にて司会のガダルカナル・タカが、ある頭文字のつく芸能人にノーギャラ前提の出演交渉を行なうという企画を行なう際に、人選に困った時は毎回のように、「番組とは関係なくウグイスの声が聞きたくなったのでお願いします」と小猫に電話し、そのたびに小猫は二つ返事で了承して電話越しに披露していたという。

因みに、江戸家猫八が鳴き声を行なったのは動物だけではない。役者としても活躍していた三代目であるが、実は『ウルトラマン』にも出演しており怪獣ピグモンの鳴き声を担当していた。さらに、これと同時期に二代目もなんと東宝映画『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』にて怪獣サンダの吹き替えを担当していたという。

それぞれの担当怪獣はいずれも悪役側ではなかったようであり、またどことなく両者の鳴き声は似ていると言われている。

120年に渡り受け継がれてきた動物物真似師が、動物だけでなく怪獣の鳴き声も繰り出していたというは、なんとも言えない巡り会わせと言えるだろう。

四代目江戸家猫八さんが死去、66歳 十八番は「ウグイス」の鳴きまね 3月9日に入院、2週間足らずで急逝
https://www.sankei.com/article/20160331-ZKDSLQI4BBPZFPTEPJKR7UHVUE/
江戸家猫八 (4代目)
https://x.gd/WXIOj
親子四代「ホーホケキョ!」いのちの響きを伝えたい
https://www.7midori.org/katsudo/kouhou/kaze_archive/miserarete/62/index.html

【参考記事・文献】

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【文 ZENMAI】

画像 ウィキペディアより引用