失われた古代の大陸として有名なのは、ムー大陸、レムリア大陸、そして何と言ってもアトランティス大陸だろう。大西洋に存在したという古代文明の栄えた大陸の一つであり、地震と大洪水により一昼夜にして海に沈んだと言われる伝説の大陸である。
アトランティス存在の是非については、これまで多くの研究や言説が残されている。心霊診断家・予言者であるエドガー・ケイシーが、「1968年から69年の間にビミニ島周辺でアトランティスが再び水中から姿を現す」といういわばアトランティス復活の予言などもなされ、実際に「ビミニロード」と呼ばれる石畳が発見されたことで話題となった。
とはいえ、このビミニロードが即アトランティスの跡地であるという確証は得られておらず、単に自然に構成されたものではないかとの意見もある。実際、アトランティス大陸については全くの架空であると断言する論者も多いのが現状だ。
このアトランティス大陸については、そもそもある人物が唱えたことがきっかけでその名が周知されていったと言われている。その人物とは、古代ギリシャの説学者であるプラトンその人だ。
プラトンと言えば、世界三大賢人の一人に数えられるソクラテスの弟子にして万学の祖と称されるアリストテレスの師匠だ。人間の客観的認知はこの世と異なるイデア界によってもたらされるという二元論を唱え、現代に通じる哲学の大元を築き上げた人物として知られている。ニーチェなどの指摘では、プラトンの思想がのちのキリスト教を形成させたとも言われている。
プラトンによってアトランティスが言及されたのは、著書である『ティマイオス』と『クリティアス』であったと言われている。前者『ティマイオス』は宇宙創造や宇宙霊魂などについて説いた対話篇であり、初めてアトランティスについての言及がなされた。後者『クリティアス』はその続編にあたり、アトランティスに対するより詳細な言及が試みられているが中断・未完で終わってしまっている。
では、それぞれのプラトンの著書で語られているアトランティスとはどのような大陸であるのか。大まかに言えば、かつて(現在から1万2000年ほど前)、大西洋上に陸地および国家が存在しており繁栄を謳歌していたが、そこに住む人々が傲慢になったことで神罰による地震と洪水を受け、ついには海中へ沈んでいったのだという。
タイトルにもなっているティマイオスとクリティアスはそれぞれ人名であり、本書内で語りを展開する人物として登場するが、実のところ両者は架空の人物であると言われている。そもそも、プラトンの著作は対話形式で著述されることが殆どであり、そこにはプラトン自身が登場するわけではない。
プラトンの大きな目的は、理想の国家とはいかなるべきかの探究であった。アトランティスは、洗礼された都市国家であったにも関わらず、傲慢な指導者たちがギリシアの侵略を試みたことで神々が天災をもたらしたという形で語られているが、この逸話は実在していた都市アテナイを引き立てる為に設定した物語(創作)に過ぎないというのが大方の見解となっている。プラトンの著書以前に、アトランティスを記述した文献が無いのは、アトランティスがプラトンによって”創られた”ことを裏付けるものであるとも解されている。
だが、その一方でアトランティスが実在した可能性が示唆される発見はいくつも確認されている。例えば、アフリカ北西部モーリタニアの中央にある「リシャット構造」通称「サハラの目」と呼ばれるドーナツ型の構造物は、隕石の衝突跡であると考えられているものの、プラトンの描写するアトランティス大陸の周辺環境に酷似しているという指摘もなされた。
また、「アトランティス大陸はヘラクレスの柱の向こうにあった」という記述があり、このヘラクレスの柱とはジブラルタル海峡の岬の古代地名に相当するとも言われ、現在のイベリア半島南端にある岩山がそれに該当するのではないかとも考えられているという。
プラトンの唱えたアトランティス大陸の実在を示すような遺跡は多く発見されている。それらが実際にアトランティス大陸を示す証拠となり得るかは研究を要するが、それはプラトンの時代において多くの人々が知っていた事柄であったのか、それともプラトンは例えのつもりで使用したが本当にそれに相当する大陸を唱えていた、いわゆる予言だったのか。失われた大陸への関心は尽きない。
【参考記事・文献】
【古代文明】アトランティス大陸が実在した可能性のある場所と文明の歴史を解説
https://life-plorer.com/history/about-atlantis/
哲学者プラトンが大陸伝説のはじまり!?いまだ解明されない「1万2000年前」の謎とは?
https://gendai.media/articles/-/99273
アトランティス大陸とは?プラトンの描いた伝説の島の実体を探る
https://spirituabreath.com/atlantistairikutoha-67164.html#i-3
「絶対に見つからない」アトランティス伝説、なぜ人気なのか?
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/23/042600209/
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【文 ナオキ・コムロ】
画像 ウィキペディアより引用