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神の使いだった悪魔「サタン」、なぜ神に謀反したのか

サタンとは、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教において悪魔たちを統べる地獄の支配者、最大級の悪魔の王とされている存在である。その正体や真実については多くの解釈は説が存在しており、現在でも多くの議論がされている。

元々、サタンという名称はヘブライ語で「敵(敵対)」「反対すること」の意味を持つ shatana を語源にしていると言われている。悪魔というイメージから敵対相手が「神」であると思われがちだが、実のところ敵対相手は「人間」であったと考えられている。

これは、サタンがそもそも神の使いであったことに由来しており、敵対する人間とは、より細かく言えば「神の意にそぐわない人間」たちを指している。

神に仕える一天使であったと言われるサタンであるが、このほかにも「サタン」が特定の天使の名前(固有名詞)ではないという説もある。例えば、バラムという祈祷師が神の意に沿わない依頼を受けてロバに乗って向かっていると、剣を持った天使が現れ過ちを伝えるというエピソードがある。

ここに登場する天使は「サタン」と表記されているが、小文字のsで始まっていることから固有名詞ではなく「妨げる者」という一般名詞として訳されている。このことから、サタンとは本来役職の名称のようなものではないかとも考えられている。実際、旧約聖書においてサタンは、自由意思によって地上の人間の行いを見て回るエージェントのような役目を果たしているのが見て取れる。

さて、旧約聖書では神の忠実な御使いであったサタンは、新約聖書では一転して堕天使あるいは悪魔としての言及が目立つようになる。「ヨハネの黙示録」では、サタンは天使の3分の1を従えて神に反逆し、大天使ミカエル率いる軍勢に敗れ地上へ投げ落とされたことが記されている。

一般に、サタンは天使として非常に高い地位であったものの、次第におごり高ぶるようになり、ついには神への反逆を起こす存在として認知されている。『失楽園』を執筆したミルトンも、サタンを堕天使のリーダーとしてダイナミックに描き、多くの人々に衝撃を与えた。

ところで、サタンに対するこの転換はなぜ起こったのか。興味深い点としてあげられるのは、旧約聖書における神(ヤハウェ)の振る舞いにある。旧約聖書における神の行ないは、我々からすればあまりにも理不尽極まりないものが多い。一例をあげると、ダビデは人口調査を行なったことで神から咎められたが、そもそも人口調査を命じたのは神自身であった。

神の理不尽な振る舞いは、要するに神への信心を試すものであると言われている。「ヨブ記」では、ヨブという信仰心の篤い人物のことを耳にしたサタンが、神の許可を得て2度ほどヨブに試練を与えるという描写が記されている。また、神の言葉を預かる「預言者」となった人々については、その誰もが幸せに生涯を全うしている者はなく、悲惨な人生を歩むことになっている。

そもそも、預言者として選ばれる理由も明示されていないため、不条理この上ない内容だ。

こうした旧約聖書に記される数々の神の理不尽さについて、新約聖書では全く別の解釈がなされることとなる。こうした神の理不尽な命令は、邪悪な御使いの仕業であるということに、いわば改変されたのである。その邪悪な御使いとして選ばれたのがサタンであったということになるだろう。

では、サタンが反逆した理由はなんだったのだろうか。聖書等で特に記述はみられないが、ひょっとすると高い地位に己惚れたサタンのおごり高ぶりではなく、そもそもサタンが神の不条理さを訴えたのではないだろうか。全能たる神に「間違っている」ことを指摘する、これ以上の神への反逆・冒涜は無かっただろう。

サタンが悪魔たるゆえんは神側の視点のみからの観察に過ぎないのではないか。今一度サタンの意思を考えてみるべきかもしれない。

いや、万一このような考え方こそがサタンに惑わされているというのであればまた話は違ってくるが。

【参考記事・文献】
森瀬繚『「堕天使」がわかる』
造事務所・吉永進一『「天使」と「悪魔」がよくわかる本』
岸本明子『「妖精・天使」眠れないほど面白い事典』

サタンって何者?悪魔の手口を知らないとやられる「サタンに人は対抗できるのか?」
https://www.biblelifecoach.net/satan/#toc11
サタン
https://dic.pixiv.net/a/%E3%82%B5%E3%82%BF%E3%83%B3

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【文 ナオキ・コムロ】

画像 ウィキペディアより引用