妖怪・幽霊

母子の霊がさまよう?!山形県最恐と呼ばれた心霊スポット「滝不動」

山形県上山市鶴脛(つるはぎ)町に位置し、県道104号線沿いに存在していた「滝不動」。正式には「滝不動明王」と呼ばれるこの場所は、県道脇の山道を進んだ先にある小さな滝と、その滝つぼにある不動明王の像と数本の刀剣が祀られている。修験者の信仰の地であったとされており、山形県上宝沢の滝不動や上山家の深沢不動など、不動明王との関連が深い地域の一つとなっている。

滝不動は心霊スポットとして伝わる謂れが非常に多い。昔、赤子をおぼって農作業をしていた母親が誤ってその赤子の頭を鎌で斬り落としてしまい、錯乱した母親がその赤子を抱えたまま鳥居で首を吊ってしまった。それ以降、母子の霊の目撃や赤子の泣き声が聞こえるといった怪現象が起こるようになり、地元民の手で地蔵を祀るようになったのだがいつの間にやら地蔵の首が無くなっており、何度修復しても首が無くなることから「首無し地蔵」と呼ばれるようになったという。

また、この土地が戦国時代には戦場となっていた、あるいは江戸時代には罪人の首を斬り落とす処刑場であったなどと言われて、その際に使われた刀剣は滝つぼで血を洗い流され、いつしか供養刀が奉納されるようになったという言い伝えがあり、無暗に刀剣に触れると災いが起こるという。

さらに、刀剣にまつわるもう一つのエピソードとして、滝つぼに刺さっていた刀剣でチャンバラをしていた子供二人が夜になっても帰ってこず騒ぎとなり、翌朝滝つぼで二人の子供の首の無い死体が地元民たちによって発見されたのだという。それ以来、奉納される刀剣は木製に変更されたそうだ。

この他、県道を少し進んだ先にある山元トンネルも心霊スポットとして知られ、近隣に火葬場があったり、廃寺が残っていたりなど、心霊スポットしての滝不動は主に不動像というよりはその近辺が恐ろしい場所として語られることが多い。不動像までの途上にあったお堂についても、散乱した雑貨の中で柱に打ち付けられていた数本の釘が「丑の刻参り」の痕ではないかとまで噂され、きわめつけは霊能力者宜保愛子が滝不動に入ることを拒絶し「手に負えない」と言って退散したという噂があるため、山形県はもちろんのこと、日本でも指折りの心霊スポットとして知られていた。

そんな上山市の滝不動であるが、2020年代に入ってから立ち入りが禁じられてしまっている。橋や建物の著しい老朽化によって撤去されたと言われており、それに伴い道中の地蔵や不動明王像、そして刀剣についても撤収されたようである。

さて、上記にあげた数々の因縁めいた逸話であるが、どれほどに信憑性があるかについてはいずれも明確ではない。先述した宜保愛子の逸話についても、彼女が立ち入りを拒んだと伝わる心霊スポットはいくつもあり、因縁の拍付けのために後付けされたものであるとも考えられなくはない。

そもそも、かつて滝不動は高校生のデートスポットであったとも言われており、また滝不動自体が遠足・ピクニックコースになっているなど、心霊スポットというには比較的賑わった場所であるともいえるだろう。因みに、お堂の中に打ち付けられていたという釘は単に箒をかけるために付けられたものだと考えられている。

今はもう訪れることも不可能になってしまったスポット「滝不動」であるが、仮にその撤去が老朽化ではなくネット時代の噂の拡大が理由であったとするならば、非常にやるせないものである。かつて立ち入りが可能であった時代は、熊の出没に注意という別の危険性も強く言われていたが、本当に恐ろしいのは留まるところを知らない人々の噂の伝播であったのかもしれない。

【参考記事・文献】
《セピア色の風景帖》第173回滝不動(上山市)
https://www.yamacomi.com/serial_column/serial_column-3188/
滝不動「山形県」
https://shinreispot.com/waterfall-immovable/
滝不動明王 山形1の心霊スポットに行って『実際に起きた超衝撃体験』首から上に厄災が…
https://yamagataa.com/takihudoumyouou/#toc7
心霊スポット「滝不動」!山形にある日本屈指の最恐スポットとは!
https://toshidensetsu-ikki.com/horror/taki-hudou
滝不動(1)
https://shinrei-spot.com/takifudou1.html

【アトラスラジオ関連動画】

【文 黒蠍けいすけ】