はるか昔の人々が描いたはずの絵や彫刻に、当時の技術では再現不可能なはずの物品が描かれているのが見つかることがある。
例えばこちらの中世の書籍にはなんと「背中にジェットパック型の装置を装着した飼い猫」らしきものが描かれている。
この絵は、16世紀にドイツに住み、オスマン帝国と戦った大砲の名手、フランツ・ヘルム(Franz Helm)の作品の挿し絵の一つだ。
ヘルムは大砲やカルトロップ、火薬などさまざまな種類の武器や砲兵システムを描いた著作や挿絵でよく知られている。しかし中でも悪い意味で注目される挿し絵がこちらの「ロケット・キャット」だ。猫に近代的なジェットパックを装着させ、空や宇宙へ飛ばそう……としている訳ではない。
とはいえ、絵に描かれている猫が背負っているものは、実際にはジェットパックではなく焼夷弾だ。
これは動物を用いた一種の兵器であり、まず敵の町や城から飼い猫を連れ去ってきて背中に基本的な焼夷弾を括り付ける。そして装置に着火した状態で逃がすと猫は家に逃げ帰り、納屋や他の建物に隠れるので離れた場所から火を放てる……というものだったらしい。なお、猫の代わりに鳩を使う例もあったそうだ。
このような戦法が当時は実際に用いられていた、という記述もあるそうだが、どこまで効果的なものだったのかは不明だという。
猫の行動は予測不可能すぎるし、放した瞬間自陣のテントや砦に潜り込んで火災を引き起こす懸念も充分に考えられる。そのため、考案はされたのだろうが実際に戦法として活用されなかっただろう、と考えられているようだ。
(田中尚 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
画像 ウィキペディアより引用