鏡の間を通って、全てが逆さまの「鏡の国」に行ってしまったのはアリスだが、昔の人々は実際に鏡に映る向こうには別世界が広がっていると考えていたようだ。
18世紀前半にパリで刊行された「教化と珍聞の書簡集」に、中国の神話に登場する鏡の世界に住む奇妙な生物が紹介されていた。
それによると、鏡の世界に住む魚は常に光を発しながらあらゆる場所を泳ぎまわるものであり、誰も捕まえたことがない生き物だが、鏡を覗きこんでいるとその奥にちらりと見えることがあるものだという。
中国の伝承によれば、鏡の向こうには意志を持った我々とは違う別の生物たちが住んでいたが、ある時鏡を通って現世を侵略しようとした。そこで、中国の神話的な皇帝である黄帝が迎え撃って倒し、鏡の向こうに送り返して「人間の姿をずっと真似るように」労役を課した。
それ以降、鏡には我々と同じ動きをする人や生物が映るようになったのだという。
なお、この書籍は17世紀頃から世界各地に飛んだヨーロッパの宣教師たちが、現地で聞き集めた様々な伝承や俗説、風習などを集めたものである。
鏡の国とその生物らに関する記述は前述のとおり、中国にいった宣教師から伝えられたもので、他にも日本や近東、アフリカなど各国の伝承が紹介されているという。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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