日本を代表する漫画家の一人永井豪。『ハレンチ学園』『デビルマン』『キューティーハニー』『マジンガーZ』など、多くの大ヒット作品を世に送り出し、また数多くの打ち切り作品を残した漫画界の巨星として知られる。
そのジャンルはギャグをはじめ、エロ、グロ、オカルトなどきわめて幅広く、四大週刊少年誌(ジャンプ・マガジン・サンデー・チャンピオン)及び休刊となった3誌(ぼくらマガジン・キング・宝島)に連載経験を持つ、唯一の漫画家である。
漫画執筆における伝説は数知れず。週刊連載5本を抱えていたという驚異的な経験を持っており、その後仕事量を少々減らしたにもかかわらず月産400~500ページほども描くほどの量産ぶりを見せ、さらにそのような大量の原稿を抱えているにもかかわらず過去に一度も落としたことがないという。
趣味はずばり漫画執筆。その彼の自宅には掲載を行なっていない私的な漫画が大量に保管されていると言われている。ネームを描かずに直接ペン入れをするなど、非常に早描きで知られているが、これは石ノ森章太郎のアシスタントをしていた時代に、二人だけで月200枚の原稿執筆を3ヶ月ほど続けた経験から備わったものであると称している。
一説には、現在に至るまでにこなした原稿の量は、先生であった石ノ森ほか、手塚治虫も達成し得なかったほどではないかとも言われている。
実は、赤塚不二夫により永井の作品が打ち切りとなった事件もあった。
永井がデビューして間もない頃のこと、彼がマガジンに連載していた『じん太郎三度笠』に対し「どうしてあんな漫画を描くんだ!」と怒鳴られたという。
本作は過激で残酷なギャグ描写が含まれていた作品であったのだが、このことが「ギャグマンガは子供向けである」と考えていた赤塚の考え方に反していたために、逆鱗に触れたのだと考えられている。
だが、永井はこのような反応に対しても、「赤塚先生が否定したもの、書かなかったものを描けば独自の個性として大成できる」と考えたようである。その結果は、言わずもがなといったところだろう。
彼の作品についての逸話も多く残っている。1968年に連載された『ハレンチ学園』は、少年誌において初めてオールヌードが乗った作品として知られ一世を風靡したが、過激なお色気のほか権威の欠片もない教師の描写などから、PTA、教育委員会、はてはマスコミから激しいバッシングがなされた。その苛烈さは、永井の人格を糾弾するほどであったという。
クレームがついた永井作品はほかにもある。彼の代表作『テビルマン』は他の多くの作家によっても様々連載された作品の一つであるが、その中に1987、88年にコミックボンボンで連載された『テビルマン戦団(バトラー)』というものがある。
同誌で連載経験のある井上大助が作画を担当しているこの作品は、コミック化もされていない幻の作品とされているが、あまりにも内容が残酷すぎる為に読者の父兄からクレームが相次ぎ休止となってしまったと言われている。余談だが、デビルマンをデザインした際、テレビ局から「敵のボスとしていいですね、ところで主人公は誰ですか?」と問われたそうだ。
その永井豪の名が、最近またクローズアップされる出来事があった。
2024年元日に発生した能登半島地震において、大きな被害を受けた地域の一つであった輪島市にあった永井豪記念館が、大規模な火事によって焼失したことが大きな話題となった。記念館には生原稿やフィギュアなど貴重な資料が展示されており、それらが灰になってしまったと嘆くファンが多かった。
ところが、その後の調査でなんとこれらの展示品が焼失を免れ現存していたことが明らかになった。この奇跡的な出来事は、記念館建設時の改築および増築による耐火対策が功を奏したと考えられており、復興の支えの一つになるに違いないとの声が相次いだ。
【参考記事・文献】
能登半島地震で全焼した「永井豪記念館」原画やフィギュアは無事だった→「不幸中の幸い」「耐火壁が超合金Zやったんや」と喜びの声
https://www.buzzfeed.com/jp/manakaabe/manga-nagai
嫉妬? パワハラ? 永井豪作品を連載打ち切りに追い込んだその真意とは?
https://blog.goo.ne.jp/douteinawa/e/45ac16ab8117b6c7c0e4a65164c277f9
永井豪
https://dic.pixiv.net/a/%E6%B0%B8%E4%BA%95%E8%B1%AA
永井豪とデビルマンの都市伝説
https://blog.goo.ne.jp/youkaiou/e/fd107d53eb63e5261dc748054d16ce9a
【アトラスラジオ関連動画】
https://www.youtube.com/watch?v=t5BXAmwjN-8
【文 ナオキ・コムロ】
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