芸能都市伝説

芸能界に恐怖を植え付けた俳優「鶴田浩二」襲撃事件

昭和を代表する俳優の一人として活躍した鶴田浩二。「天下の二枚目」と称される美貌によって、若い頃はアイドル的人気を博し、任侠映画などでは渋さを魅力として、代表的スターとして長きに渡り君臨した。

その人気ぶりから、29歳の時には映画『野戦看護婦』(1953)での一日の出演料が300万円(現在の価値で約1800万円)という日本映画史上最高額のギャラを記録したこともあった。また歌手としての活動も行ない、『赤と黒のブルース』『傷だらけの人生』などがヒットするなど歌唱力にも優れ、歌う映画スターとも呼ばれていた。

彼は、後輩を立てる為に助演での出演も厭わず、慕う後輩が多かったと言われているが、一方で好き嫌いがハッキリしていたと言われている。

同じ俳優仲間の中でも、丹波哲郎、松方弘樹、梅宮辰夫などは可愛がったそうだが、宇野重吉、加藤泰、三国廉太郎などとは一切口を聞かず、必ず間に誰かを介して伝言していたという。山城新伍に至っては、あるラジオ番組にて「殺したい俳優は鶴田浩二」と発言するほどに鶴田を非難したそうだ。

また、当初東映時代の鶴田は、高倉健など後輩の役者たちを「馬鹿だ」「ズブシロ」(“ずぶの素人”=全くの素人)などとこき降ろしていたほどに傲慢であったという。

ある時、高倉健、山本麟一らから撮影所裏へ呼び出された鶴田はそのまま決闘に持ち込まれ、結果として元ラグビー部であった山本のタックルを受けて卒倒してしまったという。それ以後は、高倉も多数で鶴田に暴行したことを詫び、鶴田も傲慢な態度を改めたという。また、タックルをした山本とも良好な関係となり、山本の闘病中には病室へ見舞いに訪れたこともあった。

トラブルが多かった鶴田であるが、そんな彼にまつわる最も衝撃的な出来事と言えば、1953年に発生した襲撃事件だ。




1月6日の午後8時半ごろ、大阪府四天王寺近くの旅館で、若い女性たちの悲鳴が上がると共に、4人の男たちが高級車に乗り込み姿を消していった。2階の部屋では鶴田浩二が血まみれで倒れており、その傷は全治10日間、頭と手を11針縫うほどのものであった。

この直前、鶴田は10人ほどの共演者と共に、正月公演を終えて旅館に戻ってきたところであった。旅館では、鶴田にサインを求める女性ファンが多く集まっていたのだが、そのさなか4人組の男たちが突如現れ、ウィスキー瓶やレンガで鶴田を殴りつけたのだ。

のちにこの事件は、山口組三代目組長田岡一雄の指示であったことが判明した。

1952年、田岡は芸能プロモーターとしてプロダクションを立ち上げ、その中で美空ひばりと鶴田の公演をオファーしていたという。だが、日程に空きが無いということで断られ、これに腹を立てた田岡が鶴田襲撃を命じたと言われている。

この事件は、かつて鶴田が実父からたびたび金の無心をされていたというトラブルがあり、田岡に仲介を頼んだことで解決したという一件があったことから、恩知らずと判断されての襲撃であったとも言われている。一方で、この公演オファーの件は鶴田のマネージャーと田岡の間で行なわれていたことであり、後にそのマネージャーが何食わぬ顔で鶴田の正月興行について粗品と金包みを渡してきたことが田岡の逆鱗に触れたと言われている。

これによると、鶴田はあずかり知らぬ事情によって襲撃されたことになるが、のちに田岡と面会を行なった際、脅しや暴力に屈しないという表明をしたことで田岡が気に入り、両者は和解することとなった。以後、両者は親交を深めていき、「三代目の前で堂々としているのは鶴田ぐらいだ」と周囲が驚くほどであったという。

だが、この襲撃事件は原因となったとされるマネージャーがのちに自殺し、さらには「田岡の機嫌を損ねるととんでもないことになる」という恐怖が芸能界に植え付けられるきっかけになったとも言われている。この襲撃事件が、芸能界にあまりにも大きい影響を与えたことは確かなようだ。

【参考記事・文献】
12月6日・鶴田浩二の伝説
https://blog.goo.ne.jp/papirow/e/390787bc2e1fce85f9352c00834ea8ec
鶴田浩二の死因は?葬儀で軍歌?耳に手を添える歌い方の理由!生い立ちが壮絶&性格に難あり?
https://asuneta.com/archives/34447
血の気が多かった高倉健 鶴田浩二との取っ組み合いで勝利
https://www.news-postseven.com/archives/20160120_376515.html?DETAIL
鶴田浩二…襲撃事件の背景には何があったのか?!
https://gossip-history.com/g00654/
鶴田浩二は山口組から襲撃されていた!
https://koimousagi.com/29095.html

(黒蠍けいすけ 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像 ウィキペディアより引用