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ちゃぶ台返しにコンダラ、アニメから誕生した「巨人の星」都市伝説

画像『巨人の星(1) (週刊少年マガジンコミックス)

巨人の星は、梶原一騎原作・川崎のぼる作画による日本の漫画・アニメ作品である。主人公星飛雄馬が厳格な父星一徹の強烈なスパルタ教育を経て最強のピッチャーへと成長し、読売ジャイアンツすなわち巨人の星を目指すという、スポ根漫画の金字塔とも称される。

「友情」「努力」「勝利」というジャンプ三原則を忠実になぞった作風となっているが、本作の掲載紙は週刊少年マガジンである。そのいずれの要素も現代の作品からすればきわめて濃厚である。中でも「努力」に関する描写は尋常ではなく、本作では試合の前にどれほど努力し準備したかが勝利への全てであり、「試合中に新たな力に目覚める」といった生半可な場面は一切見られない。

そのようなきわめて泥臭い活躍を描く本作は、その後の劇画やスポ根作品に多大な影響を与え、現在に至るまで伝説的な作品と評されている。ただし、そのような歴史に残る漫画・アニメであるからこそと言えるのか、別の意味での伝説を生み出していることも忘れてはならない。

例えば、息子飛雄馬に徹底したスパルタ教育を施し、かの大リーグボール養成ギプスといった常軌を逸した特訓でも知られる父星一徹と言えば、ちゃぶ台返しをイメージする人は多いだろう。しかし、実は作中で一徹がちゃぶ台返しをしたのはわずかに一度のみである。

これは、たびたび指摘されるものであり、アニメでのEDで毎回ちゃぶ台返しのシーンが流れたことによる思い込みによって生じたものであると言われている。だが、両手でちゃぶ台をひっくり返している描写かと言えば正確には誤りであり、実際のEDでの描写は飛雄馬をぶった一徹のそばでテーブルが大きく傾いている。




つまり、EDですら星一徹は自らの意思でちゃぶ台返しをしていないのである。それにもかかわらず、このイメージが強く刷り込まれてしまっているというのは、厳格な父というキャラクター性における象徴的存在としての威厳からであろうか。

巨人の星の噂や都市伝説では、このようにアニメにまつわる話題が主なものとなっている。現在でも伝説の回として名高いのは、飛雄馬のクリスマスパーティであろう。

アニメオリジナルとなっている第92話「折り合わぬ契約」にて、飛雄馬がクリスマスパーティの開催を企画するのだが、招待したライバルたちそして家族に至るまで誰一人としてパーティに訪れることはなかった。そして彼は、準備した料理をテーブルごとひっくり返し、ツリーはおろか椅子を投げ飛ばし窓ガラスをも破壊して号泣するのである。

また、アニメの影響によって思いも寄らない影響を与えたものがある。OPの歌詞が「思い込んだら」のフレーズで始まることはご存じだろうが、この部分を「重いコンダラ」という風に勘違いした視聴者が続出し、野球などにおいてグラウンド整備に使用する整地用手動式ローラーの俗称が「コンダラ」と呼ばれるほどに広まった。

この言葉は野球経験者の間であれば多くの人に通じるほどの知名度にまでなったのだが、問題のOPには飛雄馬がローラーを使用するような場面は全くない。

これについては、アニメ第12話「鬼の応援団長・伴宙太」という回にて、伴宙太から理不尽なしごきを受けていた飛雄馬が、グラウンド整備を一人でやれと指示をされてローラーを曳く描写がある。しかもそのシーンでOPの曲が流れたため、ここからローラーの名称が「コンダラ」であるというイメージで定着したのではないかと言われている。

【参考記事・文献】
巨人の星
https://dic.nicovideo.jp/a/%E5%B7%A8%E4%BA%BA%E3%81%AE%E6%98%9F
巨人の星
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/44367.html#id_0c638e26
重いコンダラ
https://dic.nicovideo.jp/a/%E9%87%8D%E3%81%84%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%A9
巨人の星(青雲編)第12話「鬼の応援団長・伴宙太②」
https://ameblo.jp/uwf-saki2013/entry-12420399501.html

(ZENMAI 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)