オーパーツ

オーパーツかコラージュか?!浮世絵に描かれたハンバーガーの真相

江戸時代初期、菱川師宣(もろのぶ)が確立して以来、庶民の娯楽として広まった絵画ジャンル「浮世絵」と言えば、東洲斎写楽の「三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛」、歌川国芳の「相馬の古内裏」など、誰しも一度は目にしたことがあるだろう。

19世紀後半に海外で起こった日本の美術工芸品ブーム「ジャポニズム」の中心的存在として、浮世絵は発展を遂げていった。

庶民生活や風景などが描かれ、当時の文化を知る上でも貴重な資料となる浮世絵であるが、ある時「浮世絵にハンバーガーが描かれている」という奇妙な話題が飛び交った。

2014年ごろのこと。その問題となった画像を見てみると、包装紙から半分ほどはみ出したまさしくハンバーガーが女性の足元に落ちている様が描かれている。また別の浮世絵には、地面にそのまま置かれたハンバーガーと、そのそばに数本のフライドポテトまで描かれている。

このような場合、例えば壁画に描かれた現代装置などの例からすれば、当時の物品あるいはやや誇張された植物などが現代の似ている物品に見えるに過ぎないというケースが考えられるものではあるが、この浮世絵に描かれているのはどう見てもハンバーガー、しかもチーズバーガーにしか見えない。




日本にハンバーグレシピが認知され始めたのは大正中期から昭和にかけて、ハンバーガーともなると長崎の佐世保基地での販売が始まりとされ、本格的に知られるようになったのは1971年にマクドナルド第1号店が銀座にオープンしてからである。明治以降もわずかながら浮世絵が描かれていたのは確かであるが、描かれている人物や情景からすればあまりにも異質なものであったため、この浮世絵のハンバーガーはオーパーツではないかとも騒がれた。

しかし、真相は実にシンプルなものであった。

この浮世絵のハンバーガーは、江戸時代に実際に描かれたものでもなければ、逆に合成などのコラージュで描かれたフェイクなどでもない。実は現代のアーティストが”浮世絵”として描いたれっきとした作品だった。

作者の名は寺岡政美(てらおかまさみ)。広島に生まれ1961年に渡米して現在ハワイ在住のアーティストだ。歌川国芳と同時期に活躍した浮世絵師である歌川国貞の影響を受けて以来、浮世絵の技法を用いて奇抜かつ独創的に社会問題を風刺する作品を発表し続けていることで知られている。

問題となったハンバーガーの絵のタイトルは『マクドナルド・ハンバーガー日本襲来』、日本でマクドナルド第1号店が登場した年に、マクドナルド日本上陸に触発されて描いたものだそうだ。寺岡の作品では、ハンバーガーの他にもアイスクリームをなめている江戸美人の姿が描かれているものもある。

1980年代に入ると、アメリカで社会問題となっていたエイズとそれに伴う偏見や差別の問題を取り上げ、コンドームなどを描いた浮世絵を描いている。中でも1989年に描かれた『1000個のコンドームの物語/メイツ』は、恋愛エピソードがユーモアと皮肉を多分に交えた作品として注目された。

寺岡は、「権威に対してメッセージを発すること」を作品制作のテーマとしているという。それを思えば、浮世絵のハンバーガーも単純に面白おかしく描かれたものではなく、その当時の社会の動向や問題をありありと取り上げようとする信念に基づいた作品の一つであったと言えるだろう。

【参考記事・文献】
知っておきたい19世紀以降の日系米国人と米国在住・拠点とする日本人芸術家(3)
https://rafu.com/ja/2021/08/ja-artist-in-us-3-08-30-21/
浮世絵にハンバーガーが!? そして浮世絵にUFOが~!!
https://ogura-osamu.hatenablog.com/entry/20170418/1492509688
江戸時代の絵画(浮世絵)に謎の物体…その真相が話題に…
https://kwsklife.com/edoperiod-ukiyoe/
浮世絵にハンバーガーが描かれている?江戸美人の足元にハンバーガーが!!
https://blog.goo.ne.jp/youkaiou/e/aca2571e71b3b8fa8ba6b571b1d87c73/
浮世絵にハンバーガーが描かれている!?その真相とは?
http://artistian.net/ukiyoe_hamburger/

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(ナオキ・コムロ 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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