旧約聖書「創世記」で記述される物語『ノアの方舟』は、現在に至るまでに多くの作品でモチーフとされるほどによく知られている。
ノアの方舟のあらすじは次の通りだ。神は自分の意志に反して悪行を働くようになった人間が増えたことで、一度地上のすべてを洗い流すことを決定したが、唯一正しいと認めたノアに対しては生き延びるための大きな方舟を作ることを指示した。
全長130~150メートル、3階層に及ぶ大きな方舟には、ノアとその一族そしてあらゆる一対の動物たちを乗せたという。4日間に及んだ大雨によって陸地は海にのまれ、方舟がアララトの山々に漂着したのち150日は水が引かなかった。そして神は、水が乾き地上へ出ることのできたノアたちを祝福し、もう二度と大洪水は起こさないという契約を結ぶに至ったという。
ノアの方舟については、その方舟が実在したと信じる人も多い。方舟が漂着したと言われるアララト山は、1840年に噴火を起こし一帯を壊滅状態に至らしめたのだが、1960年以降になると、宇宙衛星によって方舟らしきシルエットが観測されたり、調査団によって方舟の建造物と思われるものが発見されたりするなど、実際に方舟の痕跡と思われるものがこれまで何件も報告されている。
それらの発見では、左右対称の人工的な地形が見られるということや、動物の毛や石化した動物のフンなどが発見される、また高度な技術で造られた金属部品が多数見つかるなどされているという。
しかし、これら方舟の痕跡と呼ばれるものについては、その多くが疑問視されており、中には発見者が「フェイク」であると告白したものまである。そもそも聖書の記述にからすると、方舟の漂着地は「アララトの山々」とされていることから、アララト周辺のどこの山であるかは具体的に示されておらず、さらにたとえ方舟があったとしても、時代が下っていく中で山頂に残るままであることは疑わしいという反論も存在する。
方舟の実在性は疑問視されているのが現状である。しかし、一方で方舟の大前提とする「大洪水」は実際にあったことなのかという研究も多数ある。
聖書以前に記されたと言われるメソポタミア時代の「ギルガメシュ叙事詩」には、ノアの方舟と酷似した話が記されているのである。これは、メソポタミアのような古代の文明が河川のそばで栄えたということから、河川の氾濫などが多かったことをモチーフとしているとも言われている。
しかし、現実に陸地を覆うほどの大雨がかつて発生したという可能性も考えられているのだ。例えば、氷の彗星が地球に接近した際、太陽の熱で彗星の氷が溶けてそれが地球の引力によって大雨として降り注いだという説がある。そうした大洪水の痕跡は、アメリカのグランドキャニオンに残る水平の地層にも残っているとされ、それらの多くの水は現在、南極や北極の氷となったとも言われている。
大洪水は可能性が高いものとされる一方で、方舟については常に懐疑的な見方がなされているのが現状であるようだ。しかし興味深いのは、方舟造船についての聖書の記述である。その寸法は長さ300 キュビト、幅50キュビト、高さ30キュビトであったとされているが、この比率は運搬のための船の比率として最適とされる、いわば黄金比率であるという。
方舟のこうした構造的な記述については、かなり信憑性が高いものとされており、完全に否定されるものとは言えない。今後、方舟が発見される可能性は、あながちゼロとは言えないのかもしれない。
【参考記事・文献】
・「ノアの方舟」の物語は実話だった?!旧約聖書の隠された“真実”とは?
https://worldclub.jp/turkish/noahs-ark/
・アララト山付近で発見されたノアの方舟(箱船)の遺跡は本物なのか?
https://true-ark.com/noahs-ark-evidence/#i-3
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(黒蠍けいすけ 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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