近年のオカルト界において呪物は、ブームと言っても良いほどの注目を集めている。所持者・コレクターにもスポットが当てられることが増え、多くの人々が呪物という形あるものとして存在しながらも非日常的な雰囲気を醸す、その物体に関心を寄せているというのは興味深いものである。
呪物と聞いて、日本において最も有名であるのはやはり「藁人形」であろう。日本における代表的呪物「呪いの藁人形」とその儀式である「丑の刻参り」は、現代まであらゆる創作においても題材として取り上げられている。
古代に道教と共に伝わった呪術「呪禁道(じゅごんどう)」に由来すると考えられている丑の刻参りであるが、明確な一つの儀式であるために作法というものが存在する。古くは平家物語にも記され、また時代を経て少しずつ変容しながら現代では次のように解説されている。
恰好は「左前の白装束」をまとい、頭には鬼の姿を連想させるための「ヤカンや鍋を置く三脚の五徳」を逆様にして蝋燭をともし、また呪いや怨念を弾くための鏡を紐などで首から掛け、さらには口に刃物もしくはカミソリを咥える。持ち物には、釘とそれを打ち込む器具そして藁人形があるが、藁人形には呪いたい対象者の名前や住所を記した紙、時には対象者の爪や髪の毛など体の一部や衣類の切れ端が詰め込まれる。
打ち込むための釘は古いものが使用すべきとされ、それを深夜2時から始められるようにセッティングし、誰にもその儀式を見られないように行なわねばならないのだ。
釘についても、一説には打ち込む釘の頭を削り取り、別の釘を重ねて打ち込んでいくとも言われている。これは、藁人形にただ釘を打ち込むのではなく、釘が藁人形を貫通するように行なわれるものとも、あるいは安易に釘が抜き取れないようにするためのものとも言われている。
また、儀式を行なう期間も諸説あり、7日7晩、一ヶ月、一晩限りなどさまざまである。このように、最もよく知られた呪術でありながら用意すべきものも多く、また一晩・ひと月もの期間を誰にも見られないというのも、なかなかに厳しいものであると言える。行なうにはかなりリスクが大きい呪術なのだ。
近年に至ってもこの呪いの儀式は、真新しい痕跡が各地で見つかっている。人の恨みや呪いたいという執念が、現代においても強いものだと思えてしまうが、どうやら少々状況が異なっているようだ。昨今の藁人形は、大量生産されているがごとく同じものが使われており、なんと一説では、儀式を行なうのは依頼された代行業者であるとも言われている。
そこには限界や執念という感情が見られず、近年問題視された些細な体調の変化のために救急車へ通報するというような、安易な判断に基づいた価値観にも似ている。
呪いの儀式といっても、それでさえその人間の執念や本気のほどが見えてしまうというのは不思議なものである。
【参考記事・文献】
・丑の刻参りとは-起源と方法、恨みと仏教
https://yasurakaan.com/shingonshyu/ushinokokumairi/
・丑の刻参り~その歴史とやり方
https://indoor-mama.cocolog-nifty.com/turedure/2007/10/post_8c70.html
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(ナオキ・コムロ 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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