青森県むつ市に、とあるさびれた工場の廃墟が存在している。大湊線沿いに平行する国道から眺めると、線路向こう側の森林のてっぺんを長い一本の煙突だけが突き抜けて見えるのが象徴的だ。
中心地からやや離れてひっそりと建つその工場は、かつて戦時中には化学工場として運用されており終戦とともに閉鎖されたという。正式な名称は日本特殊銅管大湊工場であるが、地元では「こうもり屋敷」という俗称で知られており、肝試しのスポットとしても有名だ。
全国的にみれば非常にマニアックな廃墟であろう。青森県の心霊スポットとして、いくつかのサイトなどで紹介されてはいるものの、少なくともそういったサイトで心霊に関する具体的な体験談は語られていないようである。
そもそも、地元民からすると「こうもり屋敷=心霊スポット」という認識はかなり薄いようである。恐山というむつ市を代表する霊山のインパクトが強すぎるせいか、こうもり屋敷で幽霊を見たといった噂はほとんど聞かれないのが実情だ。
そんな中でも、こうもり屋敷に関する貴重な体験談が存在する。
25年ほど前、当時中学生だった宮田さん(仮名:男)は、小学生高学年の頃にむつ市へ転入したためにこうもり屋敷を知らず、友人から初めてその存在を聞いた。宮田さんの家からさほど遠くもない場所だったことから、興味を持った宮田さんは夜中にホームビデオのカメラ片手に探索を試みた。
ところが、録画を開始して工場の敷地に入り込んだ途端、ビデオカメラが動かなくなってしまったのだ。電源が回復せず、探索の撮影を諦めて家に帰ろうと来た道を戻ると、国道へ出た瞬間に電源が復帰したという。
20年ほど前、当時高校生だった橋本さん(仮名:男)は、当時仲の良かったメンバー合計3人とともに夏休みを満喫していた。ある夜、花火を買い込んでどこでやろうかと考えているうちに、こうもり屋敷へ向かうこととなった。工場の出入口から入ってすぐの吹き抜けになった広いスペースでメンバーは花火をやり始めた。
そして、一人が吹き抜け一面照らすように花火を向けたその一瞬、信じられないことに上階から橋本さんたちを見下ろす大勢の人間の顔が見えたという。
こうした体験話は、短いながらも貴重なデータである。しかし体験者が語る相手を選んで隠してしまったり、体験者自身が年月の中で忘れてしまったりと、非常に惜しい結果となることのほうが多い。この魅力的な廃墟にまつわる不思議な話が、一つの歴史としてより語られそして後世に継がれることを望みたい。
(にぅま 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
画像 Google Maps / Google
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