欧州には「春を呼ぶ」怪物の伝説と風習が現代も残っている。
ブルガリアの農村部に登場するのは「クケリ」という白く毛むくじゃらの怪物だ。全身を豊かな長く白い毛皮で覆われ、恐ろしい鬼のような顔やどこか可愛らしくも見える顔などの見た目をしている。頭部は長く伸びていたり、角や色とりどりの布で装飾されているものもあり、地域によって姿は違う。雪男のようだがユーモラスとも言える外見だ。
クケリは毎年1月から3月頃に行われる春の祭りに登場し、家々を練り歩いて悪霊を追い出し、また新しい一年を平穏に暮らせるようにしてくれるのだという。
かつてはブルガリア全土やバルカン半島各所で行われていたそうだが、現在ではブルガリアのペルニク州など数ヶ所に残るのみとなっている。
スイスのロイチェクタ然り、厳しい冬から暖かい春を迎え、悪霊を追い出す怪物が登場する祭は欧州各地に伝わっていた。規模は縮小してしまっているが、クケリのように現在でも風習が残っている場所は存在する。
これらの祭の起源は諸説あるが、古代ギリシャのトラキアにて信仰されていたデュオニソスの祭に由来するとする説等がある。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)