江戸時代の絵師、鳥山石燕の「今昔百鬼拾遺」にて紹介されている妖怪。
京都の鳥辺山に現れる僧侶の姿の妖怪だという。鳥辺山は古来より皇族や貴族の人々が埋葬される土地であったため、10世紀平安時代後期にはこの地で往生を迎えようとする僧侶が多くいた。
中には自ら体に火を放つ「焚死」を往生の方法として選ぶ僧侶もおり、こういった信仰儀式としての往生の様子を見届けようとする庶民もいたという。しかし、苦しみを伴う方法を選んだためか、中には成仏できず現世に未練を残してとどまり続けてしまう者もいた。
そんな僧侶の霊が火前坊となって現れるのだという。実際、火前坊の姿は全身に火をまとって苦しむ痩せた僧侶の姿で描かれている。
こう聞くと妖怪というよりも幽霊や怨霊の類に思えるかもしれないが、実際は妖怪の中でも怪火にあたるものだとされている。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
画像 ウィキペディアより引用