それはまだ、のんさん(仮名)が小学校5年生の頃の話だ。
当時、彼女は神奈川県箱根の小涌谷にある某学校に通っていた。残念ながら、今は廃校なのだが、教育に関して独特の概念のある学校で彼女は親元を離れ、寮生活をしていた。
ちなみに寮の構造は3階建てで、各階にお手洗いが設置されており、女子は3階、男子は2階に、そして各部屋20名ぐらいのグループに別れて生活していた。各部屋には植物名がついていて、女子のいた3階の部屋にも「つつじ」「もみじ」という名前がつけられていたのを記憶しているという。
当時は女子の人数が少なかったため「つつじ」の部屋のみを使用し、「もみじ」の部屋は使われない無人の状態であった。 しかも、「もみじ」の部屋には、一度捨てても、なぜか舞い戻って来て仕方なく飾ってある”奇妙な日本人形”が置いてあり、女子たちはその人形のことを恐怖に感じていた。
深夜、トイレに行ったとき、「もみじ」の部屋の右奥に人型の発光体が立っているのを何度か目撃した。小さな人型がまばゆいばかりに光っているのだ。多分、あれは、かの人形であったと思っている。
だが、最も怖かったのは、あの老婆との遭遇であった。
その日も深夜トイレに行きたくなった私は、トイレをすませた後、手を洗おうとした。手洗い場は窓側に設置されており、目の前には窓ガラスが見える。 その日は風もなく非常に静かな夜であった。
「・・・ん!!?」
ふと窓を見ると老婆が張り付いている。髪は長くボサボサ。手足は骨と皮しかないのかと思うほど細い。青白い顔をしたお婆さんが、窓にぴったりと張り付いているのだ。
「わわわっっっ・・・」
パニックに陥りながらも、その老婆から視線をそらさず、後ろ走りで逃げ出した。そして、一度転倒した後、そのまま全速力で走り部屋に戻った。
それ以来、老婆が姿を現す事はなったのだが、『もし・・・あの時視線をはずしていたら・・・』と思うことがある。
(聞き取り&構成 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)